

パーキンソン病は進行するとどうなるの?症状の変化を進行度にそって解説

「パーキンソン病は進行するとどうなるのか知りたい」
「進行すると症状は変わっていくの?」
このように「パーキンソン病」という病気の進行度について、詳しい情報を知りたいという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、パーキンソン病の進行に伴う運動症状の変化、各進行段階に応じた日常生活への影響について解説します。
パーキンソン病の進行過程と症状の変化を理解し、今後の療養や介護にお役立てください。
目次
パーキンソン病の進行度と症状はどう変化する?

国の難病に指定されているパーキンソン病は、神経変性疾患のひとつです。進行性の病気のため、日々病状が進んでいきますが、一般的にはゆるやかな経過をたどると言われています。
ここからは、パーキンソン病の進行度と症状の変化について、前駆期・早期・進行期の3つに分けて紹介します。
ただし、症状の出現時期・変化には個人差があるため、あくまでも、それぞれの時期に発症する可能性があるものとして捉えてください。
出典|参照:指定難病の概要、診断基準等、臨床調査個人票|厚生労働省
前駆期にみられる症状とは?
パーキンソン病の初期段階では、安静時に左右どちらか片側に手や足のふるえ(振戦)がみられます。
「振戦」は、細かく小さなもので、けいれんのような大きな震えではありません。動いている時よりも、じっとしている時など、体を動かしていない時に出やすいところが特徴です。
「こわばり」とは、筋肉の緊張のことです。この症状には、自分で動かす時だけではなく、誰かに動かしてもらう時も、筋肉や関節の伸び縮みが難しくなるという特徴があります。
この段階では、日常生活に支障が出ることは少ないですが、こわばりによって手足が伸ばしにくく、動きにくいなどの弊害が出る場合があるでしょう。
出典|参照:パーキンソン病について|医療法人社団玄同会 小畠病院
早期に生活に支障出る症状は?
パーキンソン病の進行度が早期に入ると、動作が遅くなってきます。
歩行や立ち上がりに時間がかかるようになり、動いたとしても、その動作は小さくなりやすいでしょう。
さらに進行すると、動くことが少なくなって、ある一定の姿勢から動けない、動きづらいという症状も見られます。そのため、早期まで進行すると日常生活に支障が出てくる人が増えてきます。
また、顔の筋肉も動きにくくなり、「仮面様顔貌」と呼ばれる症状が出て、無表情になる人が増えるのもこの時期です。
そのほかには、ぼそぼそとしゃべって言葉が聞き取りにくくなる、飲み込む力が落ちてよだれが出やすいなどの症状も出てきます。
出典|参照:パーキンソン病について|医療法人社団玄同会 小畠病院
進行期に新たに問題となる症状とは?
パーキンソン病の進行期では、「姿勢保持障害」など、重度の障害を発症する人が増えてきます。
「姿勢保持障害」とは、体のバランスが取りにくくなる症状です。
この症状がある人は、体のバランスを崩し、体勢を整えられないまま転倒してしまうリスクが高くなります。この症状は方向転換時、物を拾うとき、両手に物を持つときなどに起きやすくなります。
歩き出したらどんどん足が前に出て止まらなくなる「突進歩行」や、一歩目が出にくくなる「すくみ足」なども出やすく、「立つ・歩く」などの日常動作が困難になるため、特に注意が必要です。
そのほか、認知障害や睡眠障害、情緒不安定を発症する人もいるなど、精神的な面でも支障が出やすくなります。
これらのことから、進行期のパーキンソン病の人にとって、周囲のサポートや介護は必要不可欠と言えるでしょう。
出典|参照:パーキンソン病について|医療法人社団玄同会 小畠病院
パーキンソン病の進行が早い場合にできること

個人差はありますが、パーキンソン病はしっかりとした薬物治療、運動療法を行っていれば短期間で急激に症状が変化する病気ではありません。
それでも、パーキンソン病の症状の進行度合いが早いと感じた場合は、自己判断せず、専門医を受診することをおすすめします。
精密な検査をすることで、現在のパーキンソン病の進行度が把握できるでしょう。また、ほかの病気の有無を確認することも可能です。
出典|参照:パーキンソン病について|医療法人社団玄同会 小畠病院
パーキンソン病の進行との付き合い方とは

ここでは、パーキンソン病の前駆期・早期・進行期で、それぞれどのような付き合い方が望ましいかについて、具体的に解説します。ぜひ、参考にしてください。
・前駆期の場合
前駆期段階では、将来に備えて活動量の維持に努めることが必要です。そのためにはある程度の筋力と関節の柔軟性を維持することが大切です。筋力や体力を維持するためにも、軽度または中等度の運動を継続して実践すると同時に、バランスのよい食事を心がけてください。
また、趣味を楽しんだり、人と交流したりするのもよいでしょう。病気と向き合っていくためには、精神的な健康を保ち、前向きな気持ちで活動的な生活を送ることが大切です。
・早期の場合
運動機能の悪化で日常生活動作に支障が出る可能性があるのが早期段階です。
この時期は病状に合わせて、住宅環境を整備する必要があります。すくみ足による転倒防止のため、よくすくむ場所の床に目印となるテープを貼る、建物内の床の段差をなくしたり、生活導線に手すりを設置するなどのバリアフリー工事をするなど、快適に過ごせる空間を作りましょう。
その上で、家族や介護してくれる人(訪問介護など)が患者のパーキンソン症状に対して理解を深めたうえで、綿密な打ち合わせができれば、病状に応じたサポートの検討や導入がしやすくなります。
日常生活以外では、定期的な受診と、その時々の症状に合う治療法で、状態を安定させることが大切です。
受診時には、主治医がスムーズに薬の調整を行えるよう、現在困っている症状や、症状が出やすい時間帯などを、できる限り正確かつ具体的に医師へ伝えましょう。
・進行期の場合
進行期では、日常生活の一部を介護サービスに頼ることになります。そのため、生活の中の細かな動作や活動をシンプルにして、日々のストレスを軽減することが、精神的な健康を維持する上で欠かせません。
症状が重症化するため、早期以上に患者様だけでなくご家族や介護する人がパーキンソン病の症状について理解を深める必要があります。
また、住宅環境だけでなく、吸引器など必要に応じた医療機器の導入を医師や看護師と相談の上、検討していくことも大切です。
出典|参照:パーキンソン病について|慶應義塾大学病院パーキンソン病センター
パーキンソン病の治療中に発生する可能性のある3つの問題

パーキンソン病の治療は、基本的に薬物治療が中心となります。
しかしながら、薬物治療は、何らかの副作用や問題が発生するリスクがあることには注意が必要です。
ここからは、パーキンソン病の治療中に発生する可能性がある問題を3つ紹介します。
出典|参照: パーキンソン病について|慶應義塾大学病院パーキンソン病センター
ジスキネジアの発症
パーキンソン病の人は、「ジスキネジア」を発症することがあります。「ジスキネジア」とは、自分では止められない、または止めてもすぐに出現してしまう動きの総称です。
主に、顔や口唇・舌、手足など、特定の筋肉に出現するのが特徴です。
パーキンソン病の患者にみられるジスネキジアの例としては、以下のようなものが挙げられます。
・繰り返し口をすぼめる、口を突き出す
・舌を左右に動かす
・口をもぐもぐさせる、歯を食いしばる
・勝手に手や足が動く など
これらの症状は、抗精神病薬や、パーキンソン病治療薬の副作用として現れることがあるため、症状に気づいた時点で、医師あるいは薬剤師に相談するようにしてください。
出典|参照:ジスキネジア |厚生労働省
ウェアリングオフ現象の発症
ウェアリングオフ現象とは、パーキンソン病の治療薬を長期間服用することによって、治療薬の効果時間が短くなる現象です。
パーキンソン病では、主にドパミンという物質を薬物で補う治療が行われています。ただし、この治療はあくまで不足しているドパミンを補っているだけで、分泌そのものを助けるわけではありません。
病状の進行に伴い、脳細胞内に蓄えられるドパミン量は減り続けるため、投薬の回数を増やしても、薬が効きにくい状態になります。
ウェアリングオフ現象が発症すると、投薬からほんの数時間で、震えやこわばりなどの症状が戻ってくるため、日常生活にも支障が出やすくなります。
出典|参照:パーキンソン病総合治療センター |愛知医科大学病院
認知症を併発
「認知症」とは、さまざまな病気によって、脳の神経細胞の働きが低下し、記憶や判断力などの認知機能が上手く働かなくなる病気です。
一方、パーキンソン病は、脳のドパミン不足で起こる病気で、主に運動機能に障害が現れやすいのが特徴です。病気が進行するにつれ、体が思うように動かせなくなることで、家にこもりがちになる人も多いでしょう。
寝たきりのような状態まで病気が進行すると、脳の認知機能の働きも低下するため、「パーキンソン病認知症」を併発する可能性が高くなります。進行は比較的ゆっくりですが、日常生活に支障をきたすこともあるため、主な症状を知っておきましょう。
パーキンソン病認知症にみられる症状は、以下の通りです。
・短期記憶障害(最近の出来事を覚えられない)
・注意力・集中力・判断力の低下
・会話の流れが追えない、言葉が出にくい
・不安やうつ病、幻覚や妄想が出てくる
・他人との交流や社会活動への参加の意欲低下
出典|参照:知っておきたい認知症の基本|政府広報オンライン
パーキンソン病の進行について詳しく把握しておこう

パーキンソン病は、ゆっくりと進行していく病気です。
病状が進むにつれて日常生活に支障が出やすく、運動機能や認知機能にもさまざまな症状がみられるようになるため、特に周りのサポートが必要不可欠な病気と言えるでしょう。
パーキンソン病と上手く付き合うためには、本人や家族が病気をしっかりと理解することが大切です。
進行度に合わせた適切な過ごし方や、環境の整え方を知り、介護サポートの導入を検討するために、ぜひ、本記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。
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