

パーキンソン病は50歳以降での発症が多い!若年性との違いや発症リスクに影響を与える生活習慣を紹介

「パーキンソン病の発症率が高くなるのは何歳頃から?」
「若くてもパーキンソン病って発症するのかな」
「パーキンソン病にかかるリスクを減らすためには、どんなことができるんだろう?」
パーキンソン病は高齢者に多い病気だといわれていますが、何歳頃から発症するかご存じでない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、発症することが多い年齢や罹患する主な、若年で発症するパーキンソン病患者数の割合、有効とされる予防法などについて解説しています。
予防法を知れば、パーキンソン病にかかりにくい生活習慣を意識することが可能でしょう。
パーキンソン病の発症時期について知りたい方、今からできる対策について知りたい方は、本記事に目を通してみてください。
目次
パーキンソン病は50~65歳での発症が多い

パーキンソン病は50歳から65歳で発症することが多い病気です。40歳以下で発症した場合を若年性パーキンソン病と呼びます。稀に20代や30代でも発症することがあります。
日本における患者の割合は1000人に約1人といわれ、年齢が高くなるほど発症率および有病率は上がっていき、65歳以上では100人に約1人となっています。
パーキンソン病は感染症ではありませんが、人口の高齢化に伴い世界中で患者数が急増していることから、パンデミック的な状況にあるといわれています。
出典|参照:1.概要|厚生労働省
出典|参照:パーキンソン病とは|独立行政法人 国立病院機構 鳥取医療センター
出典|参照:はじめに|慶應義塾大学病院パーキンソン病センター
80歳を超える場合は男性の方が発症率が高い
世界的には、パーキンソン病の発症率や有病率は男性に多い傾向です。とある海外のデータでは、発症率は50歳未満の男女では変わらないものの、80歳以上になると男性の発症率は女性の1.6倍以上高くなるといわれています。
日本はこの傾向と異なり、女性の発症率と有病率が高く、その原因は明らかとなっていません。
40歳以下で発症するものは「若年性パーキンソン病」

パーキンソン病は若年で発症することもあり、40歳以下で発症したパーキンソン病は「若年性パーキンソン病」と呼ばれます。若年性パーキンソン病は一般的なパーキンソン病を比較すると、主に3つの違いが挙げられます。
1つ目は、パーキンソン病の主な症状である「安静時振戦」または「姿勢保持障害」の出現や認知症の合併が、少ないとされています。
2つ目は、病気の進行速度です。一般的なパーキンソン病と比べ、症状がゆっくりと進行するといわれています。
3つ目は、治療薬への反応が若年患者の方が良好であることが分かっています。
出典|参照:1.概要|厚生労働省
出典|参照:パーキンソン病とは|独立行政法人 国立病院機構 鳥取医療センター
出典|参照:パーキンソン病の4代症状|全国健康保険協会
ドパミンとは?その役割と重要性
ドパミンは、脳内で重要な働きをする神経伝達物質の一つで、さまざまな心身の機能に関与しています。具体的には、快感や多幸感を得る感情の調整、意欲ややる気を生み出す機能、そして運動の調節に深く関わっています。
これらの働きによって、私たちは日常生活の中で「楽しい」「やる気が出る」「体をスムーズに動かす」といった感覚や行動を自然に行うことができます。
パーキンソン病では、このドパミンの分泌が減少し、意欲の低下や運動障害などが起こります。そのため、ドパミンの働きを補うことや、自らの生活習慣で分泌を促す工夫が重要となります。
ドパミン分泌を促すために効果的な行動とは?
ドパミンの分泌を促すためには、日常生活に適度な運動やポジティブな習慣を取り入れることが有効です。
特に運動は、ドパミン神経を活性化させることが科学的にも示されています。
運動によるドパミン分泌の促進
ドパミンの分泌を促進させるには、呼吸や脈拍が少し増える程度の運動を長く続けることが重要です。
また、基礎的な体力や心肺機能の維持のためにも有効なため、無理のない範囲で運動をするようにしましょう。
呼吸や脈拍が少し増える強度の運動を長く続けることが必要です。
望ましい強度:ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどやや負荷を感じる程度
望ましい頻度:1日20~40分、少なくとも週3~5日(2日以上あけない)
その他のドパミンを増やす行動の例
・達成感のある活動(趣味・ゲーム・パズルなど)
・音楽を聴く・演奏する
・ポジティブな人間関係を築く
・バランスの良い食事をとる
・十分な睡眠を確保する
出典|参照:パーキンソン病における運動習慣の長期効果を確認|京都大学
出典|参照:生活上の注意(パーキンソン病について)|慶應義塾大学病院パーキンソン病センター
若年での発症は全体の10%程度
厚生労働省の調査によると、継続的に治療を受けているパーキンソン病の患者数は、令和2年の時点で28万9千人という結果になりました。推定される若年性パーキンソン病の患者数は全パーキンソン患者数の約10%といわれています。
若年性パーキンソン病を発症する方のなかには、家族にパーキンソン病を患っている方がいたという事例も多々あることから、遺伝性も起因しているとされています。
20歳未満でパーキンソン病を発症した人の65%、20歳から30歳で発症した人の32%が、パーキンソン病の発症リスクを高めると考えられる遺伝子変異を有していたという研究結果があります。しかし、これらの遺伝子を持つ人の中には、パーキンソン病を発症しない人もいます。
出典|参照:若年性パーキンソン病|Parkinson’s Foundation
パーキンソン病の原因は「ドパミン神経細胞」の減少

パーキンソン病は、中脳にある黒質のドパミン神経細胞の変性、減少によって発症する病気です。
ドパミン神経細胞は加齢により徐々に減るものですが、パーキンソン病はそのスピードが加速します。
現在、ドパミン神経細胞が減少する明確な原因は分かっていません。しかし、孤発性のパーキンソン病においては、いくつかのリスク遺伝子に環境因子が影響して発症するとされています。
出典|参照:2.原因|厚生労働省
出典|参照:概要|慶應義塾大学病院パーキンソン病センター
出典|参照:パーキンソン病 原因|独立行政法人 国立病院機構 鳥取医療センター
出典|参照:疾患概要|兵庫医科大学病院
パーキンソン病の予防には健康的な生活が重要

現在、パーキンソン病の完全な予防法は解明されていません。しかし、以下の4つは発症リスクを下げる可能性がある生活習慣として知られています。
①運動習慣
ある研究では、中等度から高強度の身体活動を行う人は、発症リスクを下げることが分かっています。つまり運動をよくする人ほど発症率が低いと考えられます。
②抗酸化物質の摂取
ビタミンE、ビタミンC、ポリフェノールなどの抗酸化成分を多く含む食品(野菜、果物、ナッツなど)は、神経細胞の酸化ストレスを抑制する可能性があります。
③カフェインの摂取
コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインには、神経保護作用がある可能性が指摘されています。
④良好な睡眠とストレス管理
睡眠の質が低下すると、脳内の老廃物排出機能が低下し、神経細胞の負荷が増すことが示唆されています。 また、慢性的なストレスは神経系に悪影響を与える可能性があります。
パーキンソン病の予防に有効とされる生活習慣の多くは、実は他の疾患——例えば、認知症、脳血管疾患、心疾患、糖尿病、ガン——の予防にも共通して推奨される内容です。
これは「全身の健康」や「脳の健康」が密接に結びついている可能性を示しています。
全てが解明されている訳ではありませんが、”全身にいいことの積み重ね”が大切です。
出典|参照:ドーパミンとパーキンソン病|東邦大学医療センター 大森病院 臨床検査部
出典|参照:JAMA Network Open
出典|参照:抗酸化ビタミンの食事摂取とパーキンソン病リスク:日本における症例対照研究|European Journal of Neurology
出典|参照:Annals of Neurology
出典|参照:脳内の老廃物排除の仕組み|日本脳科学関連学会連合
年齢に関わらずできる対策を早めにしよう

パーキンソン病は誰でもかかる可能性のある病気です。現時点では未解明な部分も多い病気なため、発症の回避は難しいとされています。
しかし、運動や楽しく張りのある生活を送ることは、ドパミンの分泌を促します。そして”全身にいいこと”の積み重ねが予防になる可能性があります。
年齢に関わらず、健康的で明るい生活習慣を心がけ、パーキンソン病の発症を予防していきましょう。
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この記事を監修した人
坪井 義夫 先生
医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
順天堂大学大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座 特任教授
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