

自宅復帰された入居者様から知る“リハビリの秘訣”

「もう一度、自分の足で歩きたい」
天野様が語る“歩くことができるまでの道のり”
パーキンソン病と診断されたとき、
「この先どうなるのか」
「もう元の生活には戻れないのでは」
と、不安な気持ちになる方も少なくありません。
今回ご紹介するのは、愛知県名古屋市内にあるPDハウス熱田にご入居された天野様のインタビューです。
歩行が困難となり、車椅子生活を余儀なくされていた天野様。
PDハウスでのリハビリを通じて再び歩けるようになり、自宅復帰を目指すまでの過程を、ご自身の言葉で語ってくださいました。
看護師やリハビリスタッフの支えを受けながら、少しずつ少しずつ、車椅子から杖へ。
さらに、杖なしでの歩行まで回復。
そして今は、「かつて転倒したあの道を、もう一度歩いてみたい」という想いを胸に、日々を過ごされています。
「コンビニやお寺まで歩けるようになった」
「映画館にまた行くのが、次の目標なんです」
その一つひとつの言葉から、今を前向きに生きる力強さが伝わってきます。
ぜひご覧いただけますと幸いです。
目次
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パーキンソン病と診断された当時の思い
パーキンソン病と診断されたきっかけについて教えてください。

以前から診てもらっていた脳神経外科の先生にかかっていて、「歩き方がおかしいんですけれども」と相談しました。その先生には腰の手術もしてもらったことがあったので、手術の影響なのかなと思っていたんです。
先生に「ちょっと歩いてみなよ」と言われて歩いてみたところ、すくみ足が出ました。それを見た先生がパッと「パーキンソン病じゃないかな」とおっしゃったんです。それがきっかけでした。
その後、家族にも「ちゃんと調べてもらったほうがいいよ」と言われて、安城市の更生病院で検査を受けました。
1回目の検査ではグレーと言われました。それから1年が経過したのですが、その間に本当に歩けなくなってしまって。
2回目の検査を受けたところ、はっきりとパーキンソン病だと言われました。
パーキンソン病と診断された時はどう感じましたか?
はっきりとパーキンソン病だと認定されたときは、正直、少し救われるような気持ちになりました。
病名がわかって、原因がはっきりしたんだから、「あとはもう治すだけだな」と思ったんです。
ただし、その時点では、もう完全に車椅子で全介助の状態でした。
生活のどのような場面で症状による辛さを感じられましたか?
歩けなくなっただけではなく、ご飯を食べていても、手元がうまくいかなくてご飯をボロボロとこぼしてしまったり、正座ができなくなったり、あぐらもかけなくなったりしました。
家の中を歩くことも難しくなっていきました。
例えば、親戚がみんな一堂に集まるような場面でも、自分だけ椅子を持って座るような状態で、「あぁ、迷惑をかけてるなぁ」と、つらく感じることもありました。
PDハウスに入居されて感じたこと
介護施設に入居されたきっかけについて教えてください。

パーキンソン病と診断されてすぐに妻がいろいろと探してくれて、PDハウスを見つけてくれました。そこからはトントン拍子に話が進みました。
自分でも恥ずかしいんですけど、やっぱり妻に頼ってばかりで……。
妻が「ここはどう?」と言ってくれて、それで私は「じゃあ、そこにしよう」とすぐに決まりました。
PDハウスに入居されて想定と違ったことはありますか?
1日のスケジュールを見たとき、リハビリ体操が1日に3回あると書いてあって、「これはいいな」と思ったんです。
でも、施設長さんが「体操3回もあるけど大変だよ」と言ってくださって、「そんなに大変なのかな?」と思いながら実際に始めてみたら……やっぱり大変でした。
午前中には体操はなく、お昼ご飯の前に1回、おやつの前に1回、夕食の前にもう1回。体操が終わって少し休んだと思ったら、また次の体操が始まる――そんなサイクルで、1日3回きちんとあるんです。
最初の頃は本当にきつかったですね。慣れるまでは、結構つらかったです。
それでも、体操への参加はほぼ皆勤に近いと思います。ほぼ毎日、参加しています。
1日3回のリハビリ体操の効果と続けてみてのご感想はいかがですか?

すぐに効果が出るものではないと思っているので、できなかったことが急にできるようになったという感じではありません。
でも、リハビリ体操をずっと続けてきたことで、すごく緩やかに状態を維持できているようになったと思います。
「ちょっとマシになってきたかな」と感じる程度で、自分の体の変化をその都度はっきりと感じることはなかなかないんですが、続けてみると、「これはリハビリ体操のおかげかな」と思うことはありますね。
自宅復帰を目指してどのようなリハビリをされていましたか?
最初のうちは、2階にある自分の居室の前の廊下を歩いていました。片道でだいたい30メートルくらいある廊下を、杖をつきながら3往復、4往復と繰り返していましたね。
ここに来た当初は、車椅子の状態でした。
それが杖になり、最近では杖なしでも生活できるようになってきました。動きにスピード感も出てきていて、それは本当にありがたいと感じています。
リハビリでの失敗談はありますか?
一時期、「もっと歩けばいいんじゃないか」と思って、歩く本数を増やしたことがあったんです。
それから、リハビリで機械を使ったトレーニングやウエイトトレーニングにも取り組んで、負荷をかけて筋肉をつけようとしたこともありました。
でも、急に運動量を増やしたことで膝が痛くなってしまって、今度は歩けなくなってしまったんです。
それでやっぱり、「無理せず、できる範囲内で続けていかないといけないな」と感じました。
ご入居期間中のスタッフの対応はいかがでしたか?

看護師さんが「今日は雨が降っているから階段で運動しましょうか」と声をかけてくださり、1階から4階までの階段の上り下りを一緒に付き合ってくれました。本当にありがたかったですね。
また、バイタルチェックや、自分の体のできもののケアも丁寧にしていただきました。
近所にコンビニがあるのですが、散歩がてらそこまで歩くこともできるようになりました。隣にはお寺もあって、天気のいい日は外に出て散歩を楽しんでいます。
全体的に、とても手厚いケアを受けていると感じています。
スタッフがしてくれたことで一番の思い出は何ですか?
入所してひと月が経った頃、11月に誕生日会がありました。
そのとき、皆さんから寄せ書きをいただきました。
読んでみると、自分のことをちゃんと見てくれているんだなと驚きました。
スタッフのいいところを一言で言うと何でしょう?
ふれあいが多いですね。
ふれあいの時間をしっかり取ってくれるところがいいと思います。
自宅復帰の目標について
自宅復帰後にチャレンジしたいことはありますか?
家の周りを散歩したいですね。
パーキンソン病と診断される前は、歩けないのに歩こうとして杖を持って転んでしまったコースがあるんです。
そのコースをまた歩きたいと思っています。
施設内ではよく映画を鑑賞されていますが昔からお好きだったのでしょうか?
映画は中学校くらいから好きでした。当時は1週間に2、3本の洋画がテレビで流れていて、それを見るのが楽しみでした。
施設では、月曜日のおやつが終わったあとに映画を観る時間があります。
興味のあるときは観ますが、関心のない作品の日は「ごめんなさい、最初からご無礼します」と席を立つこともあります。
自宅復帰後は映画館でも映画を楽しめそうですね!

行ってみたいですね。ここに来る前は、最低でも月に一度は行っていました。
自宅から車で約20分のところに、安城市のコロナワールド映画館があります。ただ、今はまだ車に乗れるかどうか分かりません。体が少し揺れるので、その揺れがなくなれば車に乗れるかなと思っています。
ここに入居して半年が経ちますが、その間、一度も映画館には行けていません。できればまた行きたいと思っています。
インタビューのまとめ
天野様はパーキンソン病と診断され、自宅では車椅子を必要とするほど症状が進行していましたが、PDハウスでのリハビリやスタッフのサポートを受けられ、現在では自立歩行が可能となり、自宅復帰を果たされました。
1日3回のリハビリ体操や無理のない歩行訓練を根気強く続けられたことが、身体機能の維持と向上に大きく寄与しています。また、「必ず自宅に帰る」という強い意志を持ち、ご自身の体調やペースを尊重しながら着実に取り組まれている姿勢は大変印象的です。スタッフとのふれあいも天野様が安心して日々を過ごせる大きな支えとなっていたようです。
同じくパーキンソン病でお悩みのご本人やご家族の皆さまには、天野様のエピソードから参考にできることが一つでもあればと願っています。
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