

パーキンソン病に役立つ口腔体操|誤嚥予防・発声練習の基本まとめ

パーキンソン病になると、飲み込みにくさや声のかすれ、表情が硬くなるなどのお悩みが増えてきます。これらは誤嚥や会話のしづらさにつながり、日常生活に影響を与えることも少なくありません。そこでおすすめしたいのが「口腔体操」です。座ったままできる簡単な体操を食事前の習慣にすることで、誤嚥を防ぎ、発声を改善し、表情筋を元気に保つことができます。
今回ご紹介する動画では、いずれも共通して「上半身をほぐすストレッチ」「声を出す発声練習」「口や舌を大きく動かす体操」が含まれており、全身と口腔をバランスよく鍛えられる内容になっています。
この記事では、言語聴覚士が解説する10本の動画をもとに、口腔体操の基本をまとめました。動画を見ながら安心して実践できるよう、流れやポイントを丁寧にご紹介します。
目次
パーキンソン病と口腔体操の効果|嚥下障害・発声のしにくさとの関係

パーキンソン病では、筋肉のこわばりや動きの鈍さによって嚥下障害や発声のしにくさが起こりやすくなります。これらは誤嚥性肺炎やコミュニケーションが上手くできないという煩わしい気持ちにつながり、生活の質を大きく下げてしまう原因です。
口腔体操は、口や舌、喉の筋肉を鍛えることで、嚥下機能や発声機能の維持・改善をサポートします。さらに、顔の表情筋も動かすため、無表情になりやすいパーキンソン病の方にとって「表情の柔らかさ」を取り戻す効果も期待できます。
口腔体操を始める前の準備と注意点
口腔体操は誰でも気軽に始められるリハビリですが、効果を高めるには正しい準備が大切です。
- 姿勢を整える:椅子に浅く腰掛け、背筋をまっすぐ伸ばします。
- 深呼吸でリラックス:始める前にゆっくり息を吸って吐き、緊張をほぐしましょう。
- 無理をしない:痛みや疲れを感じたら中止し、休憩します。
- 食事前に実施:食べる前に口腔体操を行うことで誤嚥を予防しやすくなります。
安全に続けるためには「無理をしない・毎日コツコツ」がポイントです。
基本の口腔体操|ストレッチ・舌や口の運動・発声リハビリ

パーキンソン病に役立つ口腔体操は、大きく2つのステップに分けられます。動画でも共通して取り入れられている流れで、毎日の習慣にしやすいのが特徴です。
上半身をほぐして嚥下を助けるストレッチ体操
嚥下や発声の動きは、首や肩の筋肉とも深く関わっています。肩をゆっくり回したり、首を左右・上下に動かすストレッチで筋肉のこわばりを解消しましょう。筋肉がリラックスすることで飲み込みやすくなります。
あいうえお体操とパタカラ体操|発声と飲み込みを助ける基本練習
「あいうえお体操」と「パタカラ体操」は、どちらも口周りや舌をしっかり動かすことで発声をしやすくし、食べ物を飲み込みやすくする効果が期待できる体操で、共通して誤嚥予防につながる点が大きな特徴です。あいうえお体操は母音を大きく発音しながら口全体や舌を大きく動かすもので、口周りの筋肉を広く使うことで食べ物をまとめて飲み込みやすくする力を養います。一方、パタカラ体操は「パ・タ・カ・ラ」と発音することで舌や唇をより強く動かし、声をはっきり出す練習になるだけでなく、口の中で食べ物を送りやすくする力も鍛えることができます。
3分から30分まで選べる!パーキンソン病に役立つ口腔体操動画10選
約5分以下:毎日の習慣化におすす
3分でできる!健康のための口腔体操(約3分)
動画の内容:
- 大きな口で「あいうえお」の発音練習
- 舌を「べー」と出す運動
- 首のストレッチ
首・肩の運動も含め、全体をコンパクトにまとめた定番プログラム。(約5分)
動画の内容:
- 深呼吸で体をリラックス
- 肩の前後回しでほぐす
- 首のストレッチで柔軟に
- 「あー」や「パンダの宝物」の発音練習
約5分以上:体力や時間に余裕がある日におすすめ
座ってできる上半身の口腔体操(約6分半)
動画の内容:
- 姿勢を正す準備体操
- 深呼吸で心身を整える
- 顔や肩、首のストレッチ
- 「パ」「タダ」「アカ」「ランラン」の発音練習
座ってできる首より上の口腔体操(約6分半)
動画の内容:
- 深呼吸でリフレッシュ
- 肩、顎、首のストレッチ運動
- 大きな口を開けて「あいうえお」と発声練習
- 「んーぱっ」「たぁだぁ」「あーか」「らんらん」の発音練習
座ってできる上半身のストレッチと発声練習(約7分)
動画の内容:
- 5秒キープする肩のストレッチ
- 首を左右、上下、斜め下に傾ける運動
- 口を大きく開けて「あいうえお」と発声練習
- 「パタカラ」と発声練習を5回
バランス良く様々な練習ができる口腔体操(約9分)
動画の内容:
- 手を前で組んで上にあげる深呼吸
- 体を左右にねじったり、首を上下に動かす体操
- 「い」「う」口を大きく動かす練習
- 舌を左右に動かす運動
- 「あー」と発声したり、「あいうえお」や早口言葉の練習
ストレッチをしっかりできる口腔体操(約10分)
動画の内容:
- 腕を前方に伸ばし、上下する肩の体操
- 肩を回したり、前後左右の首のストレッチ運動
- 「あー」と10秒間声を出す練習
- 「あいうえお」を大きな声でゆっくりと発音練習
ひとつの動作を丁寧におこなうストレッチと口腔体操(約12分)
動画の内容:
- ゆっくり深呼吸を5回行います。
- 平泳ぎのように大きく広げる肩の体操
- 上下左右の首の体操
- 顎や上下左右の舌の体操
ひとつの動作を丁寧におこなうストレッチと口腔体操(約13分)
動画の内容:
- 深呼吸を5回
- 肩と首まわりのストレッチ
- 目と口まわりの表情体操
- 「んパ」「タダ」「アカ」「ランラン」の発音練習
総集編!ストレッチと口腔体操まで幅広く長時間の実践(約30分)
動画の内容:
- 姿勢を正して深呼吸を5回
- 肩や首の上半身のストレッチ
- 口や目元の表情体操
- 「んパ」「タダ」「アカ」「ランラン」の発音練習
- 口すぼめ運動や舌回し運動
- 顔の筋肉を動かす表情トレーニング
- 呼吸法と咳払いの練習
- 「あー」を10秒間のばす発声練習
- 「あいうえお」をはっきり発音する発声練習
口腔体操を毎日続けるための工夫と習慣化のポイント
継続が難しいと感じる場合は、以下の工夫を試してみましょう。
- ・食事前に必ず行う習慣にする
- ・音楽やリズムに合わせて楽しむ
- ・家族と一緒に取り組む
- ・体調に合わせて短い動画を選ぶ
「できる範囲で毎日少しずつ」が長続きの秘訣です。
口腔体操を続けることで期待できる変化と生活へのメリット
継続することで、次のような効果が期待できます。
- ・飲み込みがスムーズになり、誤嚥予防につながる
- ・声が出しやすくなり、会話や発表が楽になる
- ・表情が豊かになり、対人コミュニケーションが改善する
- ・血流促進やリフレッシュ効果で全身の健康にも好影響
小さな積み重ねが、生活の質(QOL)の向上につながります。
まとめ|パーキンソン病の嚥下障害・誤嚥予防に役立つ口腔体操

パーキンソン病では、嚥下障害や発声のしにくさによって日常生活に不便を感じることが多くなります。しかし、口腔体操を習慣にすることで、飲み込みの力を維持し、声が出しやすくなります。
今回ご紹介した動画や体操を活用しながら、無理のない範囲で続けてみてください。毎日の少しの積み重ねが、安心して食事や会話を楽しめる生活につながります。
ご紹介Youtubeチャンネル
言語聴覚士による口腔体操とリハビリ体操のYoutubeチャンネル
専門職の視点で、無理なく、効果的に取り組める口腔・発声体操を多数公開しています。
ご本人だけでなく、ご家族や施設職員の方にも役立つ内容です。ぜひ一度ご覧ください。
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