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パーキンソン病の知識

パーキンソン病の基礎

監修者:坪井 義夫 先生

運営顧問・共同研究

ウェアリング·オフ現象はどんなもの?症状と原因、対処法を解説

ウェアリング·オフ現象はどんなもの?症状と原因、対処法を解説

パーキンソン病の症状である体が動かなくなる状態は、レボドパ(L-ドパ製剤)などの薬でコントロールできます。ところが長期間服用していると、薬の効き目が切れたように体が動きにくい時間帯が訪れることがあります。

こうした変化を経験すると、「薬が効かないほど病気が進行してしまったのではないか」「これ以上の治療法はないのではないか」と不安を感じる患者さまやご家族もいるでしょう。しかし、これはウェアリング・オフ現象と呼ばれる状態であり、薬が効かなくなったわけではありません。

この記事では、ウェアリング・オフ現象の症状と原因、日々の暮らしのなかでできる対処のポイントについて解説します。

ウェアリング・オフ現象による変化

ウェアリング・オフ現象とは、パーキンソン病の薬物治療を続ける中で、「効いている時間(オン)」と「効いていない時間(オフ)」がはっきり現れるようになることです。長期間の薬物治療では多くの患者さまが経験する変化であり、治療の打ち切りを意味するものではありません。

ここでは、ウェアリング・オフ現象が起こるとどのような変化があるかを解説します。

「オン」と「オフ」の違い

ウェアリング・オフ現象における「オン」と「オフ」は、それぞれ以下のような状態です。

<オンとオフの違い>
・オン:レボドパなどの薬が効いている時間帯で、体が比較的動きやすい状態。動作がスムーズで、日常生活の動きも取りやすい
・オフ:薬の効き目が切れている時間帯で、体が動きにくくなった状態。オフになるタイミングは早朝が多いが、状況によっては1日に数回現れることもある

オンとオフが現れる背景には、服用した薬の血中濃度の変化があります。オフは薬を服用することでオンに切り替わりますが、オフの時間が長くなったり、オンとオフの切り替わりが急激に起こったりすると、ご本人もご家族も戸惑ってしまうため、適切な対処が必要です。

オフ時に現れる運動症状・非運動症状

オフになると、薬物治療を始める前に戻ったような症状が現れやすくなります。

運動症状としては、動作緩慢・無動、振戦、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害などが強く出ます。それまで症状が抑えられていたのに、「朝起きてからしばらく動けない」「日中も動ける時間が短い」「次の薬を飲むまでが長く感じる」といった場合は、典型的なオフのサインといえるでしょう。

非運動症状としては、不安や気分の落ち込み、発汗、便秘、頻尿、痛みといった症状も現れることがあります。「人に会いたくない」「リハビリをする気になれない」と感じるのは、性格や気持ちの問題ではなく、薬の効き目の波と関係している可能性があります。気分の変化も含めて、主治医に伝えることが大切です。

薬が効きすぎたときの症状

オフ時の症状と対照的に、オン時には「ジスキネジア」と呼ばれる不随意運動が現れることがあります。これはレボドパの量が多すぎたり、効果が強く出たりして、自分の意思とは関係なく体が動いてしまう症状です。

1日のほとんどが揺れるような動きで占められる、幻覚を見る、気分が異常に高揚する、不要なものを買ってしまう、食欲が過度に高まるといった変化がみられるときは、薬が効きすぎている可能性があります。オフだけでなく、オン時の症状にも注意を向けることが、適切な服薬調整につながるでしょう。

ウェアリング・オフ現象の仕組みと要因

ウェアリング・オフ現象は、レボドパなどの薬を飲んで体から排出される仕組みを土台として、いくつかの要因が重なって引き起こされます。ここでは、レボドパの服用から排出までの流れと、ウェアリング・オフ現象の主な要因を見ていきましょう。

薬を飲んでから排出されるまでの流れ

通常、薬を飲むと胃から吸収されて血液に入り、全身をめぐって必要な部位に届きます。役目を果たした薬や使われなかった薬は体外に排出され、血液内に存在する量は減っていきます。体内の薬の量を適切な範囲内に保つには、血液内の量が減るタイミングで次の薬を飲むのが一般的です。

血液内の薬の量が減るスピードは、薬によってさまざまです。レボドパは、血液中の量が減るのが比較的速い薬とされており、服用後は概ね30分から1時間ほどで血液中の薬の量が一番多くなり、そのあとは少しずつ減っていきます。

そのため、1日数回に分けて服用することで、血液中の薬の量を一定の範囲内に保つよう工夫されています。

要因1:病気の進行による薬の効き方の変化

ウェアリング・オフ現象の要因のひとつは、薬の効き方が病気の進行により変わることです。

パーキンソン病の早期では、脳にある程度ドパミンを貯めておけるため、レボドパは足りないドパミンを補う役割を果たします。この段階では、レボドパの血液中の量が変化しても、もともとあるドパミンが働くため症状への影響は軽微です。

一方、病気が進行するとドパミンを貯めておく力が弱くなり、レボドパの量の波がそのままオンとオフの差として現れやすくなります。長期間服薬するとウェアリング・オフ現象が現れやすくなるのは、こうした背景が考えられます。

要因2:薬が吸収されるまでの個人差

レボドパを飲んで血液中に入るまでの速さには個人差があることも、ウェアリング・オフ現象の要因のひとつです。

レボドパが血液中に入るには、速い方では15分ほど、遅い方では2時間近くかかることもあります。薬の吸収が遅い場合や、薬の排出が速い場合には血液中の薬の濃度の波が大きくなるため、オフあるいはジスキネジアが現れやすいでしょう。

また、薬が吸収される速さは、飲み方に左右されることもあります。

レボドパは、食後に飲むより空腹時に飲んだほうが吸収されやすいとされています。一方で、緊張や便秘で胃の動きが鈍くなると、薬が吸収されにくくなることもあるでしょう。さらに、飲み込む力が弱く薬が喉に残る(咽頭残留)と、胃に届かず効きにくい場合もあります。

要因3:自己判断による服薬量の変更

パーキンソン病の患者さまの中には、医師の指示どおりに服薬せず、自己判断で薬の量を増減してウェアリング・オフ現象を引き起こす方がいます。

例えば、体調が良いからと服薬を控えた結果オフ状態になった事例や、服用を忘れたため次の服用タイミングで2回分服薬して過剰摂取になり、ジスキネジアが現れた事例も報告されています。

薬の量や回数は、必ず主治医の指示に従い、気になる変化があれば相談することが大切です。

ウェアリング・オフ現象への対処ポイント

ウェアリング・オフ現象は、医師や周囲のサポートにより対処できます。医師は、レボドパの1日の服薬回数や1回量の見直し、ほかの薬との併用など、症状に応じて調整してくれます。また、食事など生活面での対処も重要なため、周囲のサポートも欠かせません。ここでは、スムーズにサポートを受けるためのポイントを紹介します。

専門医に状況を正しく伝える

ウェアリング・オフ現象が気になっても、自己判断で服薬量や回数を変えてはいけません。専門医(脳神経内科医、神経内科医)に相談して薬を調整してもらう必要があるため、状況を正しく伝えることが大切です。

自宅療養の場合、主治医へ相談する際に服薬日誌があるとよいでしょう。「いつ薬を飲んだか」「効き始め・切れる時間」「オン・オフのあいだの症状や気分」「食事内容や便秘などの体調」などを簡単にメモしておき、ご家族が気づいた様子も併せて伝えると、より的確な調整につながりやすくなります。

専門施設の場合は、医師が居室まで訪問診療に来るケースが多く、より確度の高い診断と服薬調整が可能です。医師は、日常生活での症状を把握している看護師らと連携して細やかな情報を共有できるほか、医師自身の目で生活環境を確認できるため、正確に判断できます。

レボドパやほかの薬については、こちらの記事をご覧ください。
パーキンソン病の薬とどう向き合う?種類や服用の注意点などを解説

食事のタイミングや食べ合わせを工夫する

レボドパは空腹時に飲むと早く効果が出やすいとされています。服薬後はしばらくゆっくり過ごす、胃腸の働きを整えて便秘をコントロールするといったことも、胃での吸収を助けるために有効です。

レボドパはたんぱく質と同時にとると吸収が悪くなることが知られており、たんぱく質は夜にまとめてとるなど、食事内容を調整したほうがよい場合があります。バナナもチロシンなどのアミノ酸を含むため、レボドパと同時に食べると吸収に影響することがあります。服薬の前後は食べるのを避けましょう。

食べ合わせやタイミングの調整は、患者さまの体調や食生活によって適切な方法が異なるため、専門医や管理栄養士に相談しながら工夫してください。専門施設であれば、スタッフに調整してもらえる場合もあります。

ウェアリング・オフ現象が疑われるときは、専門医に相談しよう

ウェアリング・オフ現象は、パーキンソン病の薬物治療を続ける中で多くの患者さまが経験する自然な変化です。ウェアリング・オフ現象が現れても自己判断で薬を止めたり減らしたりせず、まず主治医に相談しましょう。服薬状況と症状、気分や体調の変化などを記録して主治医に伝えると、薬の調整に役立ちます。また、薬の吸収は食事内容やタイミングに影響されることがあるため、周囲のサポートを得て調整するのもおすすめです。

ウェアリング・オフ現象で悩んだときは、ご家族や専門家、専門施設にも頼ることが、これからの暮らしの安心につながります。PDハウスでは、専門知識を学んだスタッフが医師・薬剤師と連携し、ウェアリング・オフ現象と向き合う入居者さまがスムーズに服薬できるようサポートいたします。資料請求やご見学は、こちらからお気軽にお問い合わせください。

参考:
ウェアリング・オフについて|坪井義夫のパーキンソン病ノート(PDハウスオンライン)

  • この記事を監修した人

    坪井 義夫 先生

    医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
    順天堂大学大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座 特任教授

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