PHハウスオンライン PHハウスオンライン

パーキンソン病の知識

パーキンソン病の基礎

監修者:坪井 義夫 先生

運営顧問・共同研究

パーキンソン病の症状を前駆期・早期・進行期の症状の経過に合わせて解説!重症度分類も併せてご紹介

「パーキンソン病って何の病気なの?」
「パーキンソン病になるとどんな症状がでるの?」
このように、パーキンソン病について興味はあるけれど詳しくは知らない、という方も多いのではないでしょうか。

パーキンソン病で療養されている方の中には、腰痛で整形外科を受診して詳しく問診や検査を行っていくとパーキンソン病だった、という方がたくさんいらっしゃいます。

病気の名前はよく聞くようになりましたが、パーキンソン病が全身性(全身に症状が起こる)の神経変性疾患だということはあまり知られていません。

パーキンソン病は、加齢とともに発病が多くなり、長期化するにつれて介護を要する可能性が高くなります。生命に関わる病気ではないので症状を抱えて過ごす療養期間が非常に長い疾患です。

特に高齢者の場合、症状の多くは加齢性変化と区別がつきにくく、在宅で介護保険申請を行うと介護認定が実際の介護度よりも低く判定されやすいと介護サービスの担当者から話を聞くことがあります。パーキンソン病特有の日内変動が短時間での介護調査では把握しにくいのです。

パーキンソン病の症状

「パーキンソン病」とは、脳内の神経伝達物質、黒質ドパミン神経細胞が減少することで起こる神経の病気で、厚生労働省の特定疾患(難病)に分類されています。

ドパミンとは脳内にある神経伝達物質で、運動機能の制御に深く関わっていますのでわたしたちが運動をスムーズに行うために必要なものと考えられています。

一方でドパミンは意欲にも関連し、「快い(こころよい)」「幸せ」と感じるための物質でもあります。黒質ドパミン神経細胞はドパミンを産生しますので、この神経細胞が減少するとドパミン欠乏による症状、すなわち身体には震えや動きにくさ、意欲低下、抑うつなどさまざまな症状が現れます。

ドパミン神経細胞が減少する原因については、十分に解明されていませんが、脳に異常なたんぱく質が蓄積することで、パーキンソン病の症状が現れたときには脳のドパミンがすでに80%減っていると言われています。

パーキンソン病は50歳以上で発症することが多く、まれに40歳以下で発症することもあり若年性パーキンソン病と呼んでおり、パーキンソン病の療養者全体の約10%は40歳以下で発症するという統計がでています。

パーキンソン病の有病数は10万人に100~180人(1000人に1~2人)、65歳以上では100人に1人と言われており、高齢化に伴い多くなります。近年、世界的に高齢化の波を受けてパーキンソン病が急増しており、「パーキンソンパンデミック」と呼ばれ、症状の早期発見や早期治療が専門医(脳神経内科)から指摘されています。

パーキンソン病の主な症状である運動症状と非運動症状に分けて紹介します。

運動症状

パーキンソン病の運動症状として、主な症状は4つあります。

・運動緩慢・無動
・安静時振戦
・筋強剛(筋固縮)
・姿勢保持障害

素早い動作を行うときに動きが徐々に小さくなったり遅くなったりする「運動緩慢」や、じっとしていると震えてしまう「安静時振戦」、リラックスしていても筋肉の緊張がとれず固くなったり、動作自体が歯車のようにカチカチと引っかかって動く「筋強剛(筋固縮ともいいます)」、バランスが崩れると姿勢を保持できず転んでしまう「姿勢保持障害」が主な症状です。パーキンソン病の初期では症状に左右差があることも知られています。

非運動症状

パーキンソン病の運動症状以外に、非運動症状として主に5つの症状が挙げられます。

・睡眠障害
・排尿障害
・起立性低血圧
・抑うつ
・便秘

パーキンソン病は運動症状が広く知られていますが、実は多種多彩な非運動症状が水面下に隠れています。

パーキンソン病の約80~90%が経験している「嗅覚障害」や「便秘」、日中に眠くなったり夜に不眠になったりする「睡眠障害」、頻尿(頻繁にトイレに行きたくなる)や尿失禁などの「排尿障害」、立ち上がったときに血圧が急激に下がってたちくらみやめまいを起こす「起立性低血圧」、興味がうすれたり意欲が低下する「アパシー」や気分が晴れない、強い不安を伴い落ち込む「抑うつ」などがあります。

症状は多種多様でかなり個人差があると言われています。嗅覚障害や便秘は発症の10年以上前から起こっていることが最近の研究で明らかになっています。特に便秘と睡眠障害は、多くのパーキンソン病の療養者や家族の悩みの種になっています。

初期の段階では個人の体質と考えて市販薬や食事の調整などの対処法で解決できますが、経過が長くなるにつれて症状が軽減できなくなります。

対処に困りはじめたら、早めに専門医や看護師に相談し薬物療法や生活指導を受けます。

パーキンソン病の症状を進行に合わせて解説

パーキンソン病は、ゆっくりと年月をかけて進行していく病気です。

パーキンソン病にはさまざまな症状がありますが、パーキンソン病と診断を受ける前段階である前駆期から現れる症状、発症後早期に現れる症状、進行してから現れる症状などがあります。

パーキンソン病の一般的な症状の経過を病期に沿って紹介します。

前駆期:診断を受けるまでの段階

パーキンソン病に特徴的な運動症状に先行して便秘やレム睡眠行動異常症などの非運動症状がみられることがあります。

近年の研究で、発病の10~20年前から前駆症状と呼ばれる症状が現れることが知られています。

大きく3つに分けると、以下となります。
①自律神経に関連する症状(便秘・頻尿・全身の汗の増加)
②精神面に関する症状(意欲低下・気分の落ち込み・不安)
⓷感覚に関する症状(痛みや嗅覚異常)

これらの症状が先行し、震えや運動緩慢などがみられたときはすでに脳のドパミンがかなり減少しているので、早い段階で専門医に相談することが重要です。

早期:診断、治療を受ける前後の段階

パーキンソン病の早期には、前駆期に分かりづらかった安静時振戦や運動緩慢、筋強剛(固縮)によって生活動作に支障を感じるようになります。

安静時振戦の多くは、パーキンソン病の症状では身体の片方側にしか起こりません(左右差といいます)。しかし、中期から進行期にさしかかる時期には、片側だった安静時振戦が身体の両側で起こるようになります。

また安静時振戦は、パーキンソン病の患者の精神的なストレスに影響を受けて一時的に悪化することがあります。日内変動や気温・湿度・季節などにより症状が増減します。

日常生活の動作は患者のペースに合わせて行い、周囲は転倒予防などの安全な環境を整える必要があります。介護保険申請や障がい申請などを行い、支援体制をもう一度整える時期です。

また、治療薬の調整のためには、療養者だけではなく周囲の家族やサービス担当者から受診の際にできる限り詳細な情報を主治医へ共有することをおすすめします。症状日誌を利用すると相談内容を準備でき、患者自身が症状を把握するのに役立ちます。

進行期:症状の変動、非運動症状が目立ってくる段階

パーキンソン病の進行期には、運動障害が悪化して、バランスの障害が出やすくなります。

また、便秘、起立性低血圧、睡眠障害などの非運動障害の増加が顕著となります。ときに認知機能が低下したり嚥下機能(食事や唾液の飲み込み)の低下がみられるときもあります。

これらの場合には食事内容の変更やお薬の服用管理などを含めて、療養生活全般に医療や介護の支援が必要となる場合があります。

姿勢保持障害、すくみ足、突進歩行による転倒などを繰り返すことによって骨折などの合併症を起こしやすくなるため、住環境や身の回りの安全確保が必要となります。こまめに家族や介護・障がいサービスの担当者と情報を共有しましょう。

この時期には、お薬の効果が不安定になるウェアリングオフ現象が頻繁に起こります。

ウェアリングオフ現象とは、パーキンソン病治療のために投与される薬の効果が短くなるというものです。治療薬を投与しているのに途中で薬の切れる時間が発生してしまうことがあるのです。

パーキンソン病は、ドパミン神経細胞が減少して起こります。そのため、パーキンソン病の治療ではドパミンを補うために「L-ドパ」を投与します。

初期は、L-ドパの投与によって神経細胞がドパミンをためこむ能力があるので、1回のL-ドパの投与で症状の効果が長く続きます。しかし病気が進行した時期には、ドパミン神経細胞の機能が低下して、L-ドパを投与してもドパミンをためこむ力がなくなり、L-ドパの効果が長続きしなくなります。

また、このL-ドパや他のお薬の副作用でジスキネジアやジストニアが出る場合があります。

ジスキネジアは、自分の意思にかかわらず、手足や身体が勝手に動く症状で、ジストニアでは歯を食いしばる、目を閉じるとなかなか開かない、手に力が入って抜けないなどの症状が現れるため、療養者は疲労が重なりますので、こまめに動作や症状を主治医と相談し治療薬の調整を行います。

ジスキネジアが軽いうちは見過ごされることが多く、普段の日常生活や体調とともにノートやパソコンなどに記録して残しておくと、受診の際に主治医に相談しやすくなります。普段の症状と合わせて、日記(症状日誌)をつけることをおすすめします。

パーキンソン病の重症度の分類方法

パーキンソン病の進行度を示すものに、「ホーン・ヤールの重症度分類(ヤールの重症度分類)」があります。

・Ⅰ度:身体の右か左のどちらか片側に症状が出る
・Ⅱ度:身体の両側に症状が出る
・Ⅲ度:姿勢反射障害がある。日常生活に介助は不要
・Ⅳ度:日常生活の中で、部分的に介助が必要
・Ⅴ度:車いす生活または寝たきりで介助が必要

ホーン・ヤールの重症度分類は、以上のようにⅠ~Ⅴ度までに分けられています。

ホーン・ヤールの重症度分類のⅠ度は初期の症状の段階で、Ⅱ度が中期の症状の段階、Ⅲ度以上は、進行期と呼ばれる段階になるでしょう。

パーキンソン病の原因と進行のスピード

パーキンソン病になるのは、大脳の下にある脳幹部の中脳に存在する黒質ドパミン神経細胞が減少することが原因ですが、なぜ減少してしまうのかについてはまだはっきりと解明されてはいません。

しかし、ドパミン神経細胞の中にα(アルファ)-シヌクレインというタンパク質が溜まると、このドパミン神経細胞が減少すると考えられています。

そのため、近年、専門医によってパーキンソン病の研究や治療薬の開発が行われ、早期に診断を受け薬物治療を開始することが、その後の経過に重要とされています。

また、進行性の病気ですが、”パーキンソン病の平均寿命は全体の平均とほとんど変わらない”と考えられています。

早期の診断、適切な治療を受け、症状へのケアや症状に適した環境調整、運動やリハビリの継続、医療者への相談を行うことが日々の生活の質の維持につながります。

療養者や家族、介護サービスの担当者と日々の体調の変化について情報共有を図り、転倒による骨折や誤嚥・むせによる肺炎(誤嚥性肺炎)・便秘による腸閉塞を予防していきましょう。

合併症を予防することで生活の質の維持を図ることができます。

パーキンソン病の重症度ごとの症状を知って生活を工夫しよう

パーキンソン病は、一般的に50歳以上で発症しやすく、震えや筋肉の緊張のほか、便秘や睡眠障害など多岐にわたる症状を伴うのが特徴の病気です。

進行のスピードや症状の現れ方、重症度は療養者一人ひとり大きく異なります。診断を受けた時期や開始した治療によっても、その後の経過は様々です。

また、症状の感じ方はご本人と周囲の家族や介護サービス担当者とでは異なる場合も少なくありません。

もし、「最近少し困ってきたな」と感じ始めたことがあれば、この記事を参考に、ご自身の症状や状況を整理してみてください。

  • この記事を監修した人

    坪井 義夫 先生

    医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
    順天堂大学大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座 特任教授

その他の医師・専門家

  • 運営顧問・共同研究

    服部 信孝先生 (元 順天堂大学医学部脳神経内科 教授)

    順天堂大学 医学部脳神経内科

  • 運営顧問・共同研究

    坪井 義夫先生 (元 福岡大学脳神経内科 教授)

    医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
    順天堂大学大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座 特任教授

  • 運営連携

    松本 禎之先生 (前北野病院副院長)

    脳神経ホームクリニック
    京都大学医学部脳神経内科 臨床教授
    (前北野病院副院長)

  • 運営顧問

    高橋 良輔先生

    京都大学学術研究展開センター(KURA)特定教授
    生命・医薬系部門長

  • 共同研究

    髙橋 牧郎先生

    関西医科大学神経難病医学講座 教授
    京都大学医学部脳神経内科 臨床教授

  • PDハウス栄養管理アドバイザー

    山口 美佐

    一般社団法人 NUTRITION SUPPORTASSOCIATION 代表
    テニス栄養®・テニス栄養学® 代表

PDハウスの
資料請求・見学予約

WEBフォームでの
お申込み

WEBで申込む

お電話での
お申込み

0120-540-367

受付時間:9:00〜17:00
(年末年始除く)

電話で申込む
採用ページへ戻る