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パーキンソン病の知識

症状別ケアと対策

監修者:坪井 義夫 先生

運営顧問・共同研究

パーキンソン病で便秘になることが多いのはなぜ?対策・改善方法をあわせて解説

パーキンソン病で便秘になることが多いのはなぜ?対策・改善方法をあわせて解説

「パーキンソン病の方が便秘になりやすいのはなぜ?」
「パーキンソン病の方が便秘になるとどんな影響が出る?」
「便秘になった場合の対策や改善方法を教えてほしい」

本人や家族がパーキンソン病にかかっているという方の中には、便秘についてこのような不安や疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、パーキンソン病の方が便秘になりやすい理由とその影響を解説しています。また便秘になった際の対策や改善方法も紹介しています。

この記事を読み進めてパーキンソン病と便秘の関係性を知り、便秘に関する悩みを解決しましょう。

パーキンソン病関連の便秘で悩んでいる方は、本記事を読んでみてください。

パーキンソン病で起こる便秘について

パーキンソン病は様々な症状を引き起こすことが知られています。その中の一つとして挙げられるのが便秘です。

パーキンソン病では運動症状が起こるかなり前から便秘を起こしており、パーキンソン病患者の8割が便秘を自覚すると言われています。

便秘は症状なので、医師の診断を受けると慢性便秘症と診断され薬物治療などの治療を受けることができます。

便秘は、慢性便秘症診療ガイドライン2023によると「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも様々な支障をきたしうる病態」」と定義されています。

パーキンソン病の70~80%が運動症状のあらわれる前から便秘で悩んでおり、日常生活に支障をきたしている場合があります。放置しておくと腸閉塞などの重大な合併症を引き起こすリスクもあるため注意が必要です。

出典|参照:便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症(p.70)|一般社団法人日本消化管学会

パーキンソン病で便秘が起こる理由

便秘はパーキンソン病の非運動症状である自律神経障害が引き起こす症状の一つであると言われています。

自律神経系は消化管の働きを促進したり抑制したりする調整の役割を担っており、自律神経が障害されることにより胃腸の働きが低下します。

この自律神経の障害や腸の蠕動運動の低下、抗パーキンソン病薬の副作用や水分不足などが便秘の原因です。

また、パーキンソン病の運動症状によって腹圧が低下する、姿勢が維持できずに排便に適した体勢をとれない、排便のタイミング(便意)を逃してしまうなどの排便困難という要因も加わり、パーキンソン病で便秘が高頻度で起こるのです。

パーキンソン病で便秘になることによる影響

パーキンソン病で便秘になることによる影響

パーキンソン病は診断を受ける前から高頻度で便秘が起こるのですが、実はあまり話題にのぼりません。便秘が、単に体質という理由付けや家庭療法(家庭で対処できるケア)でコントロールできる、という誤解によって軽視されている可能性があるためです。

パーキンソン病は、便秘という症状により生活の質に様々な影響を及ぼします。便秘は身体的な苦痛や不快感はもちろんのこと、精神的にも悪影響を与える可能性があるため、便秘の症状を正しく理解し対策や改善方法を知る必要があります。

ここからは、実際にパーキンソン病の方が便秘になるとどのような影響が出るかについて、身体的な観点から解説します。

一般的にパーキンソン病などの治療薬は小腸から吸収されることが多く、便秘になると薬剤の吸収が悪くなり、効果が低くなります。便秘を放置してしまうと、パーキンソンの治療薬の吸収が低下し運動症状が悪化します。そのため、パーキンソン病治療薬の効果を最大限獲得するためにも、便秘の改善を図ることが大切なのです。

身体的には便秘に伴う不快感や痛みが起こり時には腸閉塞を引き起こす可能性がある

便秘になると腸の中に便がたまり続けるため、お腹が張った状態や痛み、肌荒れなどを伴うことがあります。ほかにも食欲不振や吐き気、おならが増える、おならが臭うなど不快な症状が続きます。

さらに悪化すると便の水分が再吸収されて便が硬くなり、内痔核や裂肛を起こすほか、長期的な便秘により便が直腸で詰まり、腸閉塞などの合併症に至るリスクが増えます。

硬い便が腸内に溜まった状態が続くと、大腸のバリア機能が低下し腸炎や潰瘍、まれに穿孔(腸に穴があくこと)を引き起こすでしょう。

合併症を起こしてしまうと命にかかわる可能性もあるので、便秘の症状は早めに医師に相談し治療を開始する必要があります。

便秘が生活に及ぼす影響

便秘に悩んでいたとしても、家族や医師に伝えにくい、話したくないという方もいるかもしれません。その結果、医療者への相談や周囲のサポートが遅くなってしまい、便秘を悪化させるリスクが高まってしまう可能性があります。

不快な症状が続くことでストレスが溜まり、睡眠や食事など生活に影響がでます。夜眠れないと腸の働きが停滞しやすくなり、お腹の張りで食事が進まなければ排便量が減少し、さらに便秘に傾き悪循環になりやすいため注意が必要です。

また、便秘が悪化しているときは自律神経系の不調が起こっているときでもあるため、精神的にも不安定になりやすくなります。このような場合には便秘以外のパーキンソン病症状の変化にも注意が必要です。

パーキンソン病の方の便秘対策・改善方法

パーキンソン病の方の便秘対策・改善方法

パーキンソン病の便秘を改善するためには症状にあった対策が必要になります。そのうえで、改善策を実践していくことが大切です。

まずは便の出ていない状況を考えてみて、その状況を整理してみましょう。

・1週間のうちで排便がどのくらいの間隔なのか(どのくらいでなくなったのか)
・1日の食事や水分の量や回数に変化はなかったか、美味しく感じているか
・1日の生活習慣に変化はなかったか(散歩をやめた、寝る時間が増えたなど)
・パーキンソン病以外の薬や治療が変わっていないか
・自分の排便の姿勢や便の出し方に変化はないか
・その他の症状で困っていることはないか(身体がよく傾く、右手のふるえが強くなった、食事中にむせるなど)

次に今起こっている状況にあった対策を実行してみます。

ここからは便秘になったときの対策や、おすすめの予防方法を解説します。

薬の服用での対処

パーキンソン病の便秘対策として重要な役割を担っているのが、薬物療法です。

便秘の治療に使う薬には様々な効果や種類があり、症状や合併症(パーキンソン病以外の病気)によって使い分けます。内服薬だけではなく、便を出しやすくする座薬や浣腸を併用することもあります。

そのため、排便の状況やパーキンソン病以外の合併症の症状をもとに主治医の診察を受け、必要な検査を受け薬の処方を受けることが重要です。

主に使用される薬は緩下剤と呼ばれるもので、代表的な薬が酸化マグネシウム製剤です。腎臓の機能が低下している方や高齢の方は量の調整が必要です。またアミティーザ、リンゼス、グーフィス、モビコールなどの緩下剤や漢方薬である大建中湯(だいけんちゅうとう)が処方される場合もあります。

薬や飲み方に関しては、主治医と薬剤師に相談して調整します。自己判断で飲み方を変えないことや、服用を中断しないことも大切です。また、薬物療法とあわせて食事内容の見直しや運動を取り入れることが大切です。

食事での対処

普段の食事内容を見直し、便秘を軽減しましょう。

食事で便秘対策をする場合、以下のポイントを押さえる必要があります。

・水分をこまめにしっかりとる(1日2リットルなど目安を作る)
・不足しがちな食物繊維の摂取を心がける(オートミールや大豆、きのこやひじき、根菜や葉野菜、果物などを少しずつ毎日摂取する)
・ヨーグルトやチーズ、漬物などの発酵食品に含まれる乳酸菌を取り入れる
・動物性たんぱく質や脂質の多い食品を控える(卵、肉、加工食品など)

このような食事を心がけ腸を整えます。そして大切なことは食事を楽しみながらよく咀嚼して食べることです。

「明日は何にしようかな」
「今日のおやつはどれにしよう」

リラックスして楽しむことで消化吸収もよくなり、パーキンソン病にも有効なのです。

出典|参照:一目でわかるクリニカルレシピ|川崎医科大学附属病院

運動での対処

もっとも大切になってくるのが、運動やリハビリテーションの継続です。運動やリハビリテーションを行うことで全身の血行を促し、腸の働きも活発になります。

具体的な運動方法は、以下の通りです。

・ヨガ
椅子に座って深呼吸をしながら下半身は膝を外側に開けたり内側に閉じたりする、上半身を左右にねじる。深呼吸に合わせるのがコツ。

・ウォーキング
1日30分程度時間を決めて行う。履きなれた靴で行うのがコツ。

・骨盤底筋トレーニング
椅子に座ってまたは仰向けで膝を立てて、息を吐きながら肛門をキュッと締める(お腹もキュッとなる)。力を抜いて残りの息を吐く。息を吸ってまた息を吐きながら締める、を繰り返す。息を止めないのがコツ。

・ストレッチ
座ったまま腕を椅子のひじ掛けに置いて、息をゆっくり吐きながら左右に体を傾ける。体を傾けすぎないのがコツ。

これらの運動やリハビリテーションには、腸の動きを刺激する・筋肉の強化・排便しやすい姿勢を維持するなどの目的が含まれています。理学療法士や作業療法士に相談し楽しみながら続けましょう。

いずれの運動も無理なく、前後でしっかりと水分を摂取して呼吸をゆっくり行いながら実行するのが大切なポイントです。

便秘の症状が悪化する前に対処しよう

パーキンソン病の方は便秘を起こしやすく、お腹の張りや腹痛だけでなく、不快感やストレスも続くため、多くの方が悩みを抱えています。

上記の対処ももちろん必要ですが、みなさまがご自宅で行われている方法をご紹介します。ご自身の生活にあったものをお試しください。

・ベッドに仰向けになって”の”の字マッサージ
・湯たんぽで腰を温める
・2日に一度はお風呂に腰まで浸かる
・朝食にバナナ&ヨーグルトを添える
・椅子に座って(または寝て)足首と股関節の曲げ伸ばし
・とにかく水分は飲む!!(目標1.5リットル)

訪問看護師のおすすめめは、下記のとおりです。

・濡れたタオルをビニールに入れてレンジで1分半温める
・別のタオルに包んで腰に当てながら”の”の字マッサージ
・終わったら温かい水分を飲む

腰に当てた後、首にも当てると安眠効果もあるそうです。やけどをしないように温度にご注意ください。

排便の回数や間隔は年齢や性別によって異なるため、便秘という症状の捉え方も異なり、排便が丸1日あいただけでお腹の張りを感じることもあれば、3日あいても何も感じないこともあります。カレンダーなどに排便の有り無しを〇や✕でつけるのもおすすめです。

便秘は、重症になると命にかかわる合併症を起こしてしまうリスクもあります。食事や運動、薬物療法などの対策を早期から実践し便秘を予防していきましょう。

今回紹介した記事を参考に、普段の排便についての困りごとを主治医に相談して、自分にあった便秘対策をみつけてください。

  • この記事を監修した人

    坪井 義夫 先生

    医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
    順天堂大学大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座 特任教授

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