PHハウスオンライン PHハウスオンライン

パーキンソン病の知識

パーキンソン病の基礎

監修者:坪井 義夫 先生

運営顧問・共同研究

パーキンソン病の重症度分類とは?「ホーン・ヤールの重症度分類」と「生活機能障害度分類」を具体的な症状とともに解説

パーキンソン病の重症度分類とは?「ホーン・ヤールの重症度分類」と「生活機能障害度分類」を具体的な症状とともに解説

「パーキンソン病の進行や重症度はどうやって判断しているの?」
パーキンソン病について、このような質問をよくいただきます。

パーキンソン病は進行性の病気のため、治療を受けている最中も日常生活を安心して送るには、生活環境や治療薬の調整など適宜見直しをしていく必要があります。

また、治療にかかる医療費の助成や介護施設などの支援サービスについて調べ、準備を整えておくことも必要です。

本記事では、パーキンソン病の重症度を評価する「ホーン・ヤールの重症度分類」と「生活機能障害度分類」について紹介します。

この記事を参考に、進行度合いにおける病状を正確に把握し、今後の生活設計や必要なサポートに役立ててください。

パーキンソン病の重症度分類とは?

パーキンソン病の症状の段階

パーキンソン病の重症度分類には、主に症状の段階を示す「ホーン・ヤールの重症度分類」と、生活の自立度で評価する「生活機能障害度分類」の2つがあります。

パーキンソン病の治療は、症状の段階によって薬物療法や手術療法などの治療法を適切に選択する必要があります。

これらの分類は、症状の進行度や日常生活への影響を評価し、適切な治療方針を立てるために重要な指標となっています。また、進行に合わせてリハビリテーションや運動などを治療と併用することで、身体機能の維持や日常生活動作・生活の質を保つことができると言われています。

パーキンソン病の重症度は、評価時点の状態で判断するため、必ずしも重くなっていくわけではなく、治療の効果によって軽減することもあります。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

ホーン・ヤール重症度分類

ホーン・ヤール重症度分類

ホーン・ヤール(Hoehn-Yahr)の重症度分類は、パーキンソン病の症状の進行を5段階で評価するものです。

症状が体の片側か両側か、歩行に変化はないか、体のバランスを保つことができるか、日常生活への影響はどの程度か、などを総合的に判断し1度から5度まで分類します。

この分類は、パーキンソン病の進行の把握や治療方針、リハビリテーション内容の検討、公的支援対象の判断などに広く活用されています。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

出典|参照:パーキンソン病の障害評価とリハビリテーション|国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

1度:症状は片側の手足にみられる

1度は、体の片側だけに手足の震えや筋肉の硬さを感じるのが特徴です。

腕の振りが小さくなったり、足の動きがやや遅くなったりします。また、「こわばり」と表現される筋肉の硬さを、わずかに感じることもあります。

症状は軽く体の障害はないか、あっても軽度で日常生活や仕事への影響はほとんどありません。しかし、患者本人にとっては、自分の体の動きが気になったり、体の不調に気づき始めたりする時期です。

多くの方がこの時期にかかりつけ医や専門医に相談します。このような症状でどの科を受診したらいいのか迷う方も多いのですが、体のことで気にかかることがあれば、普段から通っているかかりつけ医に相談してください。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

2度:症状は両側の手足にみられる

2度になると、手足の震えや筋肉の硬さ(こわばり)が両側にみられるようになります。

日常生活や仕事に不便さを感じるようになり、外出時の付き添いなど介助を必要とすることがあります。姿勢を保ちにくくなり、バランスの取りにくさを感じるのもこの時期です。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

3度:姿勢やバランスを保てなくなり方向転換の時に転びやすくなる

3度は、日常生活に支障がでて介助が必要となりはじめる段階です。

バランスを保つことが難しくなり姿勢の変化が現れることもあります。また、歩行が小刻みになる、足がすくむなどの症状が見られます。そのため、方向転換の時に転倒しやすくなり、日常生活に支障がではじめます。

多くの日常動作を自分でこなせる反面、症状の急激な進行や新たな症状に直面し、周囲のサポートや生活環境を考え始める時期です。

1度・2度と比較して症状が強くなり、バランスを崩しやすくなるため日常生活の動作によっては介助が必要な場面もみられます。

具体的な症状としては、すくみ足で方向転換が行いにくくなったり、歩くときに片側に寄ってしまったり、いすから立ち上がりにくくなったりします。転倒しやすくもなるため、自宅環境の調整が必要です。

生活動作では、ボタンのかけ外しや食事に時間がかかるようになります。疲れやすさを自覚する(易疲労性といいます)のもこの時期です。生活のしづらさを感じはじめるので、家族や介護サービス担当者とともに、自立を尊重しつつ、どのタイミングや場面で介助が必要かを相談していくことが必要です。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

4度:日常生活の様々な場面で介助が必要となる

4度になると、起立や歩行が困難となり、日常生活において何らかの介助が必要となります。

この時期にはすくみ足による生活への支障も顕著となり、トイレ動作にも影響が出始めるでしょう。

介護保険を利用して介護サービスを導入することになりますが、症状の日内変動や多様性から、要介護認定は1から5まで幅広く分布する傾向があります。

「良くなったり悪くなったり24時間毎日違うので大変」という言葉の通り、症状のオン・オフ(体の動きやすい時間と動きにくい時間)の違いや持続時間によって、必要な介護の量や内容が大きく変わるのが特徴です。

日常生活の動作では食事は概ね介助を必要としませんが、入浴は高頻度で介助が必要となります。一人暮らしであれば特に夜間の介助者不足によって生活が難しくなるため、高齢者施設への入所や介護サービスの充実を検討しましょう。

便秘や睡眠障害などの非運動症状への対処策も含めて、専門医の受診以外に、日常的に医療相談ができる専門外来や看護外来などの訪問看護を利用しはじめます。

パーキンソン病で最も重要なことは、病を持つ方の意向を周囲と共有し、その方の生活スタイルや要望に添ったサポート体制を作り上げることです。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

5度:車いすでの生活が中心となり、介助なしでは寝たきりになる

ベッドで過ごす時間が増え、日常生活のほぼ全ての場面で介助が必要になります。

ベッドの上で体の向きを変える際にも介助が必要となるため、床ずれ(褥瘡)やむせ(誤嚥)、肺炎などに注意する必要があります。

ただ、パーキンソン病の方がすべて5度まで進行するわけではありません。

5度は、脳梗塞や認知症などの合併症のある方や、手術や骨折で長期間安静が必要だった方などが該当します。

自宅環境の整備や運動の継続、リハビリテーションの検討、転倒予防や合併症予防、現状の維持を目指した対応が必要になります。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

出典|参照:ポケット褥瘡を有したパーキンソン病患者のケアの経験|国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

生活機能障害度分類(厚生労働省)

生活機能障害度分類

厚生労働省研究班の生活機能障害度分類は、日常生活における自立度を評価する指標です。

1度から3度までの3段階で構成されています。この分類は、患者の生活状況を具体的に把握するために活用されています。

出典|参照:パーキンソン病の障害評価とリハビリテーション|国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

1度:日常生活に介助をほとんど必要としない

1度では、日常生活を送るうえでほとんど介助は必要ありません。

症状はホーン・ヤール重症度分類の1度・2度に相当します。軽い震えや筋肉のこわばり、動作の緩慢さがありますが、食事や着替え、入浴などの基本的な日常活動はほとんど介助を必要としません。また、通院を一人で行うことも可能です。

社会生活への影響はごくわずかな段階と言えますが、生活のしづらさを感じはじめ、少しずつ生活環境の調整や周囲のサポート体制を考え始める必要があります。

パーキンソン病と診断され、症状と向き合う中で起こる心身の不調を周囲と相談できる環境が大切です。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

出典|参照:パーキンソン病の障害評価とリハビリテーション|国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

2度:部分的な介助が必要になる

2度では、日常生活や通院に部分的な介助が必要となります。

症状としては、ホーン・ヤール重症度分類の3~4度相当です。バランスが崩れることによって歩行が不安定になります。また、食事や排せつなど、一部の日常生活に困難が生じます。

仕事や社会活動に制限が出始める段階で、通院においては付き添いが望ましいでしょう。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

出典|参照:パーキンソン病の障害評価とリハビリテーション|国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

3度:全面的な介助が必要になる

3度は、日常生活全般で介助が必要な状況を指します。

症状はホーン・ヤール重症度分類の5度に相当し、自力での歩行や起立が不可能となります。車いすの使用が常態化し、食事や着替え、入浴や移動など、ほぼすべての日常生活において介助が必要な段階です。

通院についても介助者の付き添いが必須となります。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

出典|参照:パーキンソン病の障害評価とリハビリテーション|国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

重症度分類は適切な治療のために必要

実はパーキンソン病の症状かもしれません

パーキンソン病は、症状や障害がほとんど変化しない疾患(病気)とは異なり、進行性であり様々な症状が個々人によって多彩に現れます(そのためパーキンソン病は多彩な症状とよく表現されます)。

ホーン・ヤールの重症度分類と生活機能障害度分類の2つの分類は、パーキンソン病の病期(疾患の進行度や範囲を示す指標)を正確に判断し、疾患の診断や治療方針の決定に重要な役割を果たします。

この2つの分類を指標とすることで、パーキンソン病の進行状況や予後(病気の見通し)を予測することが可能となります。

また、リハビリテーションプログラムの決定や介護サービスの見直し、生活環境の調整、特定医療費(指定難病)助成制度の認定においても、これらの分類が指標となります。

重症度分類を有効活用しよう

パーキンソン病重症度の分類

「ホーン・ヤールの重症度分類」と「生活機能障害度分類」の2つについて、どのような分類か、各段階の状態がどのようなものであるかを紹介しました。

パーキンソン病は症状の進み方や症状の現れ方が個々によって様々です。これらの分類を指標として、療養者や家族だけではなく、介護や障害のサービス担当者とともに介護・療養について前もって考えることができます。

これらの重症度分類を使って現在の状況を専門医と共有することで、進行度や日常生活への影響などを把握でき、素早く、症状や困りごとに添った治療や支援を受けることが可能となるでしょう。

出典|参照:6 パーキンソン病|厚生労働省

  • この記事を監修した人

    坪井 義夫 先生

    医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
    順天堂大学大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座 特任教授

おすすめ記事

その他の医師・専門家

  • 運営顧問・共同研究

    服部 信孝先生 (元 順天堂大学医学部脳神経内科 教授)

    順天堂大学 医学部脳神経内科

  • 運営顧問・共同研究

    坪井 義夫先生 (元 福岡大学脳神経内科 教授)

    医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
    順天堂大学大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座 特任教授

  • 運営連携

    松本 禎之先生 (前北野病院副院長)

    脳神経ホームクリニック
    京都大学医学部脳神経内科 臨床教授
    (前北野病院副院長)

  • 運営顧問

    高橋 良輔先生

    京都大学学術研究展開センター(KURA)特定教授
    生命・医薬系部門長

  • 共同研究

    髙橋 牧郎先生

    関西医科大学神経難病医学講座 教授
    京都大学医学部脳神経内科 臨床教授

  • PDハウス栄養管理アドバイザー

    山口 美佐

    一般社団法人 NUTRITION SUPPORTASSOCIATION 代表
    テニス栄養®・テニス栄養学® 代表

PDハウスの
資料請求・見学予約

WEBフォームでの
お申込み

WEBで申込む

お電話での
お申込み

0120-540-367

受付時間:9:00〜17:00
(年末年始除く)

電話で申込む
採用ページへ戻る