パーキンソン病になりやすい人とは?遺伝や発症の傾向と対処法
ご自分やご家族の不調について「もしかしてパーキンソン病なのではないか」と考えている方は、どのような人がパーキンソン病になりやすいのか気になるかもしれません。
パーキンソン病の原因はまだ特定されていないため、「パーキンソン病になりやすい人」の特徴も明確ではありません。この記事では、パーキンソン病を発症した方に多い状況を通して、発症の傾向やパーキンソン病が疑われる際の受診の目安と対処法について解説します。
目次
パーキンソン病になりやすい人は?
「パーキンソン病になりやすい人」という言葉を聞くと、特定の生活習慣や身体的・精神的特徴を持つ方が発症しやすいと思うのではないでしょうか。しかし、パーキンソン病の原因は医学的に特定されていないため、どのような方がなりやすいのかも解明されていません。
一方で、パーキンソン病になった患者さまには、いくつかの傾向があることがわかっています。ここではその一部をみていきましょう。
50歳以上である
パーキンソン病は50歳以上で発症することが多く、加齢とともに発症する方が増える傾向があります。65歳以上の有病者は10万人あたり950人と推計されており(日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」)、高齢になれば誰もが向き合う可能性のある病気といえます。
一方で、50歳未満はパーキンソン病を発症しないというわけでもありません。40歳以下で発症することも稀にあり、「若年性パーキンソン病」と呼ばれますが、50歳以上での発症数に比べると少数です。
ご家族に発症した方がいる
パーキンソン病患者のうち、血縁のあるご家族にパーキンソン病を発症した方がいる場合は「家族性パーキンソン病」と呼ばれ、家族性の遺伝子変異により発症する可能性が示唆されています。
家族にパーキンソン病の方がいると必ず発症するわけではなく、遺伝的な要因が関わるケースは全体の5~10%程度です。ご家族の病歴がある場合は、定期的な健康チェックや気になる症状の早期相談を心掛けるとよいでしょう。
頭部外傷や化学物質の影響がある
過去にくり返し強い頭部外傷を負った経験のある方は、パーキンソン病の発症リスクが高まる可能性が指摘されています。頭部への強い衝撃が、脳の神経細胞に影響を与えることが研究で示唆されているためです。
また、農薬や殺虫剤、有機溶剤、重金属といった一部の化学物質に長期間さらされることが、発症リスクを高めるという研究もあります。ただし、これらは決定的な原因とはいえず、さらされる環境にあったからといって必ず発症するわけではありません。リスク要因を知った上で、必要に応じて専門医などに相談することが大切です。
パーキンソン病の症状とメカニズム
パーキンソン病の国内患者数は推計約26万人で、10万人あたり100〜300人が罹患していると推計されています。
決して珍しい病気ではない一方で、現れる症状は人によってさまざまです。ここでは、パーキンソン病の主な症状と、脳内で何が起こっているのかを整理します。

パーキンソン病の主な症状
パーキンソン病とは、脳の神経細胞が徐々に減少する進行性の神経疾患です。その症状は、大きく運動症状と非運動症状に分けられ、特に運動症状については「パーキンソン病の4大症状」と呼ばれる特徴的な症状が知られています。
<主な運動症状(パーキンソン病の4大症状)>
・動作緩慢・無動
・振戦(ふるえ)
・筋強剛(筋固縮)
・姿勢保持障害
<主な非運動症状>
・便秘などの消化器障害
・夜間頻尿などの排尿障害
・睡眠障害
・嗅覚の低下
・血圧低下や起立性低血圧(立ちくらみ)などの自律神経障害
・気分の落ち込み、意欲の低下などの精神症状
パーキンソン病の運動症状・非運動症状については、こちらの記事をご覧ください。
パーキンソン病でよくみられる運動症状と非運動症状を解説!重症度と併せてご紹介
これらの症状は、日常生活のさまざまな場面に影響を及ぼします。
運動症状により、着替えや食事・歩行といった基本的な動作に時間がかかったり、転倒しやすくなったりするかもしれません。また、非運動症状によって睡眠の質の低下や気力の減退を招くこともあります。
さらに、運動症状と非運動症状は互いに影響し合うため、悪循環に陥りがちです。この悪循環は、心身の機能が複合的に低下するフレイルの状態につながるとも指摘されています。これらの影響により、外出や社会参加の意欲が低下してしまうこともあるでしょう。
そのため、運動症状と非運動症状の両方に気を配ることが大切です。
パーキンソン病に似た症状が現れる病気
パーキンソン病に似た症状が、ほかの疾患でも現れることがあります。症状が似ていても原因や治療法が異なるため、専門医は見分けがつきにくい病気を除外しながら診断し、適切な治療方針を検討するのが一般的です。
パーキンソン病に似た症状が現れる病気には、以下のようなものがあります。
<代表的な関連疾患と症状>
・進行性核上性麻痺(PSP):転倒しやすい・視線を上下に動かしにくいなどが特徴
・大脳皮質基底核変性症(CBD):手足の動きがぎこちなくなる失行や運動の遅さが現れる。体のどちらか片方に強く症状が現れるのが特徴
・多系統萎縮症(MSA):いくつか病型がある。発症初期の症状がパーキンソン病に似た線状体黒質変性症、発症初期に起立・歩行のふらつきなどの小脳症状が現れるオリーブ橋小脳萎縮症、発症初期に尿失禁や失神などの自律神経障害が現れるシャイ・ドレーガー症候群などが代表的
・脊髄小脳変性症(SCD):歩行時のふらつきや構音障害など、小脳性の運動失調が主な症状
・レビー小体型認知症(DLB):認知機能の低下や幻視を伴うことが多い
・薬剤性パーキンソニズム:一部の薬の副作用として、パーキンソン病に似た症状が現れる
パーキンソン病を発症した方の脳内で起こっていること
パーキンソン病を発症した方の脳でみられるのが、ドパミンを作る神経細胞の減少です。ドパミンは運動の調節に深く関わる物質であり、大脳の下に位置する中脳の黒質という部位で作られますが、減少すると動作の遅れやふるえといった運動症状につながると考えられています。

しかし、ドパミンを作る神経細胞がなぜ減少していくのか、その原因や仕組みは現在も完全には解明されておらず、世界中で研究が続けられています。
パーキンソン病の原因については、こちらの記事をご覧ください。
パーキンソン病の原因は?遺伝やドパミンとの関係、メカニズムを解説
パーキンソン病が疑われるときにすべきこと
パーキンソン病は進行性の疾患ですが、ほかの疾患と見分けがつきにくいため診断までに時間がかかることが多く、早めの受診が大切です。
パーキンソン病を疑っていても、「診断されるのが怖い」という心理があり、受診をためらうこともあるかもしれません。ですが、受診によってパーキンソン病あるいはほかの疾患と診断されれば、早期に対策を始められるでしょう。
疑いがある段階での受診は、どちらの結果であっても本人とご家族にとってプラスになります。だからこそ、「もしかして」と思ったら早めに行動することが重要なのです。
ここでは、早期受診と対策のために、すぐに始めたほうがよいことを紹介します。
症状を把握し、記録する
パーキンソン病を疑ったら、まず症状を把握することが大切です。「いつ頃から」「どんな症状が」「どんな場面で出るか」「家族の病歴」などを記録しておくと、診察がスムーズになります。ご家族が日常での変化を記録することも有効です。
<症状例>
・安静時に手や足がふるえる
・動作がゆっくりになった、歩幅が小さくなった
・表情が乏しくなった、声が小さくなった
・便秘や嗅覚の低下など非運動症状が複数重なっている
一方で、これらの症状はほかの疾患でも起こりうるため、このような症状があるからといってパーキンソン病と決めつけないことも重要です。記録をもとに、冷静に専門医へ相談しましょう。
専門医の受診を検討する
パーキンソン病は早期に診断されるほど、早い段階から治療やリハビリを始められます。早期診断のために大切なのは、神経内科医など専門医を受診することです。
パーキンソン病の診断には専門的な知識が必要であり、神経内科医でなければ診断が難しいケースもあります。症状への疑いが少しでもあれば、神経内科・脳神経内科への受診を検討してください。難病相談支援センターなど公的な相談窓口も活用できます。

早期受診・診断のメリットは進行抑制と不安解消
パーキンソン病が疑われる場合、「様子を見よう」と先延ばしにせず、早期に専門医を受診することで、症状の進行を抑制しやすくなります。確定診断を受けたあとには、薬物療法やリハビリ、生活環境の整備など、症状や生活に合わせた対策を検討していきます。
早期に受診し、診断を受けるメリットは進行抑制だけではありません。診断がつけば「不調の原因がわからないまま不安でいる状態」から抜け出せ、治療・生活・将来の計画を具体的に考え始めることができます。「知ること」自体が、不安を解消する第一歩といえるでしょう。
パーキンソン病に関する不安は、専門医や専門施設に相談しよう
パーキンソン病を発症する原因は特定されておらず、特定の生活習慣や身体的・精神的特徴によって「なりやすい人」がいるわけではありません。ただ、発症する年齢は50歳以上であることが多く、さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。
パーキンソン病は早期に診断することが望ましいため、疑わしい症状があれば早期に受診しましょう。専門医(神経内科医)や専門施設と連携しながら前向きに治療に取り組めば、病気の進行を遅らせることが可能です。
PDハウスには専門知識を学んだスタッフが在籍し、医師との連携により患者さまとご家族の暮らしを適切にサポートいたします。資料請求やご見学は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
参考:
令和5年 患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)(厚生労働省)
パーキンソン病診療ガイドライン2018(日本神経学会)
-
この記事を監修した人
坪井 義夫 先生
医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
順天堂大学大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座 特任教授
おすすめ記事
その他の医師・専門家
-
各種SNSにて最新情報配信中!
-
PDハウスの日常生活を
ブログでご紹介SUNブログはこちら
-
パーキンソン病のお役立ち情報を
小冊子で配布資料詳細はこちら
-
メールマガジンで
パーキンソン病のお役立ち情報を配信中メルマガ登録はこちら