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パーキンソン病の知識

パーキンソン病の基礎

監修者:坪井 義夫 先生

運営顧問・共同研究

パーキンソン病の症状はどのように進行する?段階ごとの変化を解説

パーキンソン病の症状はどのように進行する?段階ごとの変化を解説

パーキンソン病と診断されると、「これからどのような症状が現れるのだろう」「いつまで今の生活を続けられるのだろうか」と、先の見通しが気になる患者さまやご家族は多いのではないでしょうか。

パーキンソン病は進行性の疾患ですが、短い期間で急激に悪化するものではなく、進み方には個人差があります。この記事では、症状進行の段階と、それぞれの時期に合った過ごし方を解説します。

パーキンソン病はゆるやかに進行する病気

パーキンソン病とは、脳の黒質にあるドパミン神経細胞が徐々に減少することで発症・進行する、進行性の神経変性疾患です。国の指定難病のひとつにも定められています。

ただし、短期間で急激に悪化する病気ではありません。早い段階で適切な治療を始めれば、症状をコントロールしながら安定した状態を長く保てる場合も多くあります。

症状の変化は、前駆期・早期・進行期の3つの時期に分けて捉えられます。診断を受けるまでの段階が前駆期、診断と治療を受ける前後の段階が早期、症状の変動や非運動症状が目立ってくる段階が進行期です。

この分け方は症状の変化に着目したもので、運動症状の出方や姿勢保持障害の有無による5段階の分類「ホーン・ヤールの重症度分類」とは、評価の軸が異なることも知っておきましょう。

ホーン・ヤールの重症度分類

生命予後についても、過度に心配する必要はありません。治療薬の研究開発が進んだ現在、パーキンソン病患者の平均寿命は全体の平均とほとんど変わらないと考えられています。

パーキンソン病の重症度の評価については、こちらの記事をご覧ください。

パーキンソン病の症状を前駆期・早期・進行期の症状の経過に合わせて解説!重症度分類も併せてご紹介 

前駆期:症状の特徴と向き合い方

前駆期は、症状が出始めるものの、まだ日常生活への支障は少ないことが多い時期です。この段階では医師の診断を受けていないことも多く、気になる症状があっても「年のせいかもしれない」と見過ごしている方もいるかもしれません。

ここでは、前駆期にみられやすい症状と、疑いがあるときの相談・受診について解説します。

前駆期にみられる症状

前駆期は、便秘や嗅覚の低下といった非運動症状が、運動症状に先立って現れやすい時期です。発症の10〜20年前から自覚されることもありますが、パーキンソン病特有の症状かどうかわかりにくいのが特徴といえます。

代表的な非運動症状としては、便秘、嗅覚の低下、うつ、レム睡眠行動異常症(寝ているあいだに大声を出す、手足を動かすなど)が挙げられます。いずれも単独で現れることが多く、この段階でパーキンソン病を疑うのは難しいのが実情です。

なお、前駆期の終わりに近づくと、字を書く動作がぎこちなくなる、片側の腕の振りが小さくなるといったごくわずかな運動面の変化に気づかれることもあります。ただし、安静時振戦・運動緩慢・筋強剛といった代表的な運動症状がはっきり現れるのは、次の「早期」からです。

前駆期の過ごし方

パーキンソン病を疑ったときにまず取り組みたいのは、症状についての知識を深め、かかりつけ医などの主治医に相談することです。

ただし、パーキンソン病の診断には専門的な知識が必要で、特に早い段階では脳神経内科医でなければ判断が難しいケースもあります。少しでも疑いがあれば、脳神経内科(神経内科)の受診を検討しましょう。

早いタイミングで診断されれば、症状が軽いうちに対策を始められるためコントロールしやすくなります。

なお、便秘や嗅覚の低下、気分の落ち込みといった症状は、ほかの疾患でも起こりえます。自己判断でパーキンソン病と決めつけず、専門医の診察を受けて確かめることが重要です。

早期:症状の特徴と向き合い方

早期は、動作緩慢などによって日常生活に支障が出始めやすい時期です。この段階で診断されて治療を開始するケースは多く、服薬やリハビリを生活に組み込んでいくスタート地点ともいえます。

ここでは、早期にみられる運動症状・非運動症状と、住環境・受診・周囲のサポートのポイントを見ていきましょう。

早期にみられる症状

早期は、安静時振戦・運動緩慢・筋強剛という3つの代表的な運動症状がそろって現れやすくなる時期です。

安静時に左右どちらか片側の手や足に現れる細かいふるえ(安静時振戦)は、力を入れていないときに起こり、動かすと小さくなる点が特徴的です。歯みがきや洗髪、調理などの際に手の動かしにくさとして自覚される運動緩慢(運動の遅さ)も現れ、歩行や立ち上がりに時間がかかる、一つひとつの動作が小さくなるといった変化として自覚されやすくなります。あわせて、筋強剛(筋固縮)と呼ばれる筋肉のこわばりも現れ、自分で動かすときだけでなく、他者に手足を動かしてもらって関節が伸び縮みするときにも硬さを感じることがあります。これらの症状が重なり、日常生活に支障を感じ始める方が増えてくるのがこの時期です。

顔の筋肉の動きが乏しくなって無表情に見える仮面様顔貌、声が小さく聞き取りにくくなる変化、字が小さくなる小字症なども現れやすくなります。床での寝返りや着替えが難しくなる、飲み込む力が落ちてよだれが出やすくなるといった症状が出てくることもあるでしょう。

非運動症状としては、便秘や頻尿などの自律神経症状、不眠や日中の眠気といった睡眠の乱れ、気分の落ち込みや意欲の低下、痛み、疲労などがみられます。

早期の過ごし方

早期に大切なのは、定期的に受診して、主治医に状況を正確に伝えることです。処方された薬を指示どおりに服用しながら、運動習慣をつけたりリハビリに取り組んだりして、日常生活動作(ADL)を維持していきましょう。

治療を進める際には、ご本人だけでなく周囲も症状について理解しておくことが大切です。

例えば幻視・幻覚などの症状が出たとき、周囲に理解がないと「精神に変調をきたした」と誤解されてしまうかもしれません。しかし、ご本人にとっては現実として感じられるつらい体験で、頭ごなしに否定されると治療に取り組む意欲をなくしてしまうことがあり、フレイルや廃用症候群につながる可能性もあります。

ご家族やホームヘルパーなどの支援者が症状を理解し、必要なサポートについて話し合える関係をつくっておくことが、症状の進行を防ぐ上でも重要なのです。

住環境の整備も、この時期から検討したいポイントです。運動機能の低下によって日常生活動作に支障が出始めるため、すくみ足による転倒を防ぐ工夫が欠かせません。床に目印のテープを貼る、段差をなくす、手すりを設置するといった対策が有効です。

進行期:症状の特徴と向き合い方

進行期は、姿勢保持障害やすくみ足などによって、立つ・歩くといった日常動作が難しくなりやすい時期です。周囲のサポートが必要不可欠になる場面も増えてきます。

ここでは、進行期にみられやすい運動症状・非運動症状と、介護・支援の活用のポイントをあわせて整理します。

進行期にみられる症状

進行期の運動症状で目立つようになるのが、姿勢保持障害です。バランスを崩したときに体勢を立て直せなくなり、転倒のリスクが高まります。方向転換をする、物を拾う、両手に物を持っているといったシーンでは特に注意が必要な症状です。

歩き出すと足が止まらなくなる「突進歩行」や、一歩目が出にくい「すくみ足」も出やすく、立つ・歩くといった日常動作が困難になっていく時期でもあります。

また、治療を続ける中で、薬の効き目が短くなるウェアリング・オフ現象や、薬が効いているときに身体が勝手に動くジスキネジアといった運動合併症がみられることも増えます。

非運動症状として現れやすいのは、認知機能の変化、睡眠障害、情緒の不安定に加えて、幻覚・妄想、便秘や起立性低血圧といった自律神経症状です。進行期は、パーキンソン病による日常生活への影響が大きくなりやすい時期といえるでしょう。

ウェアリング・オフ現象については、こちらの記事をご覧ください。

ウェアリング・オフ現象はどんなもの?症状と原因、対処法を解説

進行期の過ごし方

どの時期においても、自己判断で薬の量や回数を変えないことは大原則ですが、進行期には嚥下障害などで服薬しづらくなる場合もあります。服薬状況やウェアリング・オフ現象が起こる時間帯、困っている症状を主治医に正確に伝えられるよう、受診前にはパーキンソン病日誌を3日間つけておくとよいでしょう。

ウェアリング・オフ現象やジスキネジアは、医師による調整で対処できる場合が多くあります。飲み込みの変化も、あわせて相談してください。

リハビリは、無理のない範囲で継続することが大切です。理学療法・作業療法・言語聴覚療法などを組み合わせ、転倒に配慮しながら、姿勢・歩行・日常生活動作・嚥下などの維持を目指します。内容は専門職の指導を受けながら定期的に見直し、リハビリのない日も毎日できる運動を習慣にするのがおすすめです。

この時期は、日常生活の一部を介護サービスに頼る場面も多くなります。不安や介護の負担を一人で抱え込まず、公的支援や専門施設のサポートを活用していきましょう。

進行が早いと感じたときの対処

パーキンソン病の進行が早いと感じたときの対処

パーキンソン病の治療に取り組んでいて、「急に症状が進んだ」と感じる場面もあるかもしれません。そのようなときは自己判断せず、専門医を受診することが大切です。精密な検査を受ければ現在の進行度を把握でき、ほかの病気が隠れていないかを確認することもできます。

適切な服薬調整と日頃からの服薬管理を徹底し、継続的なリハビリに取り組むことで、急な進行を抑えられる場合があります。全介助、車椅子でPDハウスに入居された患者さまが、こうした取り組みによって再び自立して歩けるようになり、在宅復帰された例もあります。

在宅復帰をされた患者さまの事例については、こちらの動画をご覧ください。

【念願の在宅復帰】リハビリの秘訣は?PDハウス熱田・利用者様インタビュー

また、症状の変化として現れているものが、薬の効き方の変化や、環境・体調の影響によるものである可能性もあります。「いつ、どのような場面で困ったか」「薬を飲んでからどのくらい経っていたか」など、日々の様子を記録して主治医に伝えると、原因の見極めや治療の調整に役立つでしょう。

段階ごとの変化を知り、見通しを持って備えよう

パーキンソン病は進行性の疾患ですが、多くの場合は前駆期・早期・進行期という段階をたどりながら経過し、進み方には個人差があります。各段階で現れやすい症状を知っておけば、どのように過ごせばよいかを前もって考えられます。

まず、疑いがあれば早いタイミングで脳神経内科を受診しましょう。診断を受けたあとは服薬とリハビリに取り組み、早期以降は住環境の整備や介護サポートの検討を進めて、療養と介護の見通しを立てておくことが大切です。症状の変化が気になるときは、自己判断せず主治医に確認してください。

PDハウスにはパーキンソン病専門スタッフが在籍しており、症状の進行に合わせた暮らし方やサポートについてアドバイスいたします。資料請求やご見学は、こちら からお気軽にお問い合わせください。

参考:
パーキンソン病(指定難病6) (難病情報センター)
(疾患・用語編)パーキンソン病 (日本神経学会)

  • この記事を監修した人

    坪井 義夫 先生

    医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
    順天堂大学大学院医学研究科 特任教授

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