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パーキンソン病が治る時代は来る?アムシェプリなど最新研究を解説

パーキンソン病が治る時代は来る?アムシェプリなど最新研究を解説

パーキンソン病と診断されたとき、「どんな治療法があるのか」「完治するのか」ということが気になる患者さまやご家族は多いでしょう。

そんな中で新しい治療の報道に接すると、その治療はいつ受けられるのか、現在受けられる治療とはどう違うのかといった疑問がわくこともあるのではないでしょうか。この記事では、治療の現状や研究の動向、「治る時代」に向けて今の暮らしで大切にしたいことを解説します。

パーキンソン病は「治る病気」なのか

2026年10月時点では、パーキンソン病を根本から治す方法は確立されておらず、「治る病気」とはいえません。ただし、治療によって症状をコントロールし、自分らしい暮らしを長く続けることは可能です。ここでは、現時点で受けられる治療と、将来の新しい治療を待つ上での考え方について解説します。

現時点では、パーキンソン病は「コントロールする病気」

パーキンソン病が発症する原因はまだ完全には解明されていないため、現時点では病気の原因を取り除く根本治療は存在しません。現在の治療の中心的な目的は、症状をコントロールして暮らしやすくすることです。

パーキンソン病を発症した患者さまの脳内では、黒質という部分の細胞が脱落していることがわかっています。黒質の神経細胞は、運動の調節に関わるドパミンという神経伝達物質を作り出す働きを持ちますが、この神経細胞が脱落するとドパミンを十分に作り出せないのです。

脳内のドパミンの働きイメージ

代表的な薬であるレボドパは、脳に運ばれるとドパミンに変換され、ドパミンの不足を補うことで動作緩慢や筋肉のこわばり、ふるえなどの運動症状をやわらげます。こうした薬物療法と並行して、リハビリによって歩行や姿勢、日常生活動作、発声・飲み込みなどの機能維持を図ることで、症状のコントロールが可能です。

症状や生活に合わせて薬を調整し、リハビリを継続することで、診断後も長く自分らしい生活を送る患者さまは多くいらっしゃいます。「完治しないなら治療しても意味がない」と考えるのではなく、今ある症状と上手に付き合うことが大切です。

待っていれば「パーキンソン病が治る時代」は来る?

パーキンソン病の治療に関する研究の進展が報道されると、「パーキンソン病が治る時代が来た」と受け止めるかもしれません。しかし、研究成果が発表された時点では、まだ一般診療として受けられないことがほとんどです。基礎研究の後には何相もの臨床試験(人を対象に有効性や安全性を調べる試験)があり、さらに製造販売承認の審査や公的保険適用(薬価収載)などの段階を経る必要があります。

また、「有望な結果が出た」ことは「完治できるようになった」ことと同じではありません。対象となる患者さまや期待できる効果、リスクが限定されている場合もあります。

将来に希望を持つことは大切ですが、新しい治療を待つために現在の処方薬を減らしたり、リハビリを中断したりするのは避けましょう。症状が不安定になると転倒などの危険が高まり、日常生活にも影響します。気になる情報を見つけたときは、信頼できる情報源かどうかを確かめた上で、主治医に相談してください。

現在の一般的なパーキンソン病治療

パーキンソン病は進行性の疾患であるため、治療法も多岐にわたります。ここでは、現在一般的に行われている治療をみていきましょう。

標準的治療:薬物療法とリハビリ

パーキンソン病治療の中心は、レボドパをはじめとする薬物療法とリハビリです。

薬物療法では、不足したドパミンを補う薬やドパミンの働きを補助する薬などを使い、症状をコントロールします。症状の出方や進行状況、年齢、生活状況などによって適した薬が異なるため、主治医による調整が必要です。

リハビリは、歩行や姿勢などを支える理学療法、着替えや食事などの日常生活動作を練習する作業療法、発声や飲み込みを支える言語聴覚療法などを組み合わせて行います。薬が効いて動きやすい時間帯に取り組むなど、薬物療法と組み合わせることも重要です。

薬とリハビリの2本柱を継続することで、症状をやわらげながら身体機能や生活の質の維持が目指せます。薬の効き方や症状に変化があれば、服薬時間と身体の状態を記録して受診時に伝えると、治療の調整に役立つでしょう。

薬物療法の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
パーキンソン病の薬とどう向き合う?種類や服用の注意点などを解説

進行に応じた治療:新たな選択肢

薬を調整しても効果が長続きせず、身体が動きにくい、いわゆるオフの時間が増える場合には、症状や全身状態に応じて新たな選択肢が検討されます。

LCIG(レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法)ホスレボドパ・ホスカルビドパ持続皮下注療法は、薬を持続的に投与して効果の変動を抑える方法です。

DBS(脳深部刺激療法)では、脳に電極を留置し、電気刺激によって運動症状を調整します。

そのほか、MRガイド下集束超音波治療は、磁気共鳴画像で位置を確認しながら超音波を集中させ、振戦(ふるえ)などの症状に関係する脳の一部を治療する方法です。

どの治療にも対象となる条件があり、すべての患者さまが受けられるわけではありません。

2026年5月には、iPS細胞由来の細胞移植治療「アムシェプリ」が公的保険適用となりました。アムシェプリは、レボドパなど既存の薬物療法で十分な効果が得られない患者さまの運動症状を改善する目的で、条件および期限付きで製造販売承認を受けました。そのため、実施施設や対象が限られています。ご自身がこの治療の対象かどうか、どのような治療を行うのかは、主治医に確認しましょう。

パーキンソン病治療に関する研究の最前線

パーキンソン病の治療研究は世界中で活発に進んでおり、新たな可能性が生まれつつあります。ただし、研究中の技術が一般診療で使われるようになるまでには、前述のとおり長い時間がかかる場合があります。

報道にふれる際は、研究段階なのか製造販売承認済みなのかを見極めることが大切です。ここでは、現在研究が進んでいる取り組みを紹介します。

疾患修飾療法(DMT)

疾患修飾療法(DMT)とは、症状を一時的にやわらげるだけでなく、病気の進行そのものを遅らせたり止めたりすることを目指す治療です。パーキンソン病では、進行抑制効果が確立された疾患修飾療法はまだありませんが、その実現に向け、次のような研究が進められています。

<研究中の疾患修飾療法(DMT)>

  • ・脳内に蓄積するα-シヌクレインを減らす薬(抗体療法・ワクチン・低分子化合物)
  • ・エネルギーをつくるミトコンドリアの機能を守る薬(抗酸化薬、LRRK2阻害薬)
  • ・細胞治療(幹細胞移植、神経栄養因子投与)
  • ・遺伝子治療
  • ・神経の炎症を抑える薬(GLP-1受容体作動薬など)

これらは作用の仕組みや開発段階が異なり、臨床試験で十分な効果を示せなかった候補もあります。前述のアムシェプリは、失われたドパミン神経細胞を補う細胞移植治療として実用化されましたが、製造販売承認を受けた適用は運動症状の改善であり、病気の進行を止める疾患修飾効果が確立された治療ではありません。

このように、研究上の期待と、現在確認されている効果を分けて理解する必要があるでしょう。

開発中の事例:遺伝子治療用製品「GT0003X」

2026年6月、パーキンソン病を対象とした遺伝子治療用製品「GT0003X」が厚生労働省の「先駆的再生医療等製品指定制度」の対象品目に指定されました。この制度は、革新的な製品に優先的な相談や審査を適用し、製造販売承認までの期間短縮を目指すものです。ただし、指定を受けたことは、製造販売承認や公的保険適用を意味するものではありません。

GT0003Xはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターと呼ばれる運び役を使い、ドパミン合成に必要な3種類の酵素の遺伝子を脳内の特定部位へ届けることで、脳内で持続的にドパミンを作る能力の回復を目指すものです。現在も開発中であり、一般の患者さまが通常の診療ですぐに受けられる治療ではありません。

通常の診療で使用されるためには、今後の臨床試験や製造販売承認の審査が必要です。

GT0003Xのような開発中の治療に関心を持った場合も、今の治療を自己判断で見直すのではなく、主治医に最新の状況を確認しましょう。

「パーキンソン病が治る時代」に向けて大切なこと

パーキンソン病が治る時代に向けて求められる姿勢

「パーキンソン病が治る時代」はまだ到来していません。今大切なのは、将来の医療に期待するだけでなく、薬物療法やリハビリをしっかり継続することです。治療の変更を考える際は自己判断で減らしたり中断したりせず、必ず主治医に相談してください。症状が不安定になると、転倒や事故につながるおそれもあります。

症状の変化や新しい治療について気になることがあれば、ネットの情報だけで判断せず、主治医や神経内科医に相談し、現在受けられる治療かどうかを確認しましょう。

パーキンソン病専門外来やパーキンソン病に詳しい介護施設、患者会など、信頼できる専門家やコミュニティとつながることも選択肢のひとつです。

「パーキンソン病が治る時代」に希望を持ちつつ、今の治療を継続しよう

パーキンソン病を根本から治す方法は現時点では確立されていませんが、「治る時代」に向けた研究は活発に行われています。しかしながら実際に治療法が確立されるには時間が必要なため、現時点では症状の進行を抑える治療やリハビリを継続し、うまく症状をコントロールすることが大切です。主治医と相談しながら前向きにパーキンソン病と向き合い、QOLを維持していきましょう。

PDハウスにはパーキンソン病専門スタッフが在籍しており、医師・薬剤師と連携しながら、治療と向き合う患者さまやご家族の暮らしについてアドバイスいたします。資料請求やご見学は、こちらからお気軽にお問い合わせください。

参考:
パーキンソン病診療ガイドライン2018(日本神経学会)
パーキンソン病(難病情報センター)
日本における非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞「アムシェプリ」の製造販売承認取得に関するお知らせ(住友ファーマ株式会社)
パーキンソン病を対象としたGT0003Xについて、先駆的再生医療等製品指定を取得(株式会社 ONODERA GT Pharma)

  • この記事を書いた人

    高橋 良輔医師

    京都大学 総合研究推進本部 参与 京都大学 医学研究科多系統萎縮症治療学講座 特定教授

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