パーキンソン病の睡眠障害とは?種類・原因・対策を解説|坪井義夫医師の「パーキンソン病ノート」
パーキンソン病の睡眠障害は、多くの方にみられる非運動症状のひとつです。寝つけない、夜中に目が覚める、日中の眠気といった悩みは、病気が関わって起こります。
本記事では、坪井義夫先生のYouTube「パーキンソン病ノート」の内容をもとに、睡眠障害の種類と原因、生活の工夫や薬による対策を解説します。
※本記事で紹介する動画は以下からご覧いただけます。
【動画①】「パーキンソン病の睡眠について」
【動画②】「パーキンソン病の睡眠障害への対応」
目次
パーキンソン病でみられる睡眠の問題とは
パーキンソン病の睡眠の問題は、病気による非運動症状として現れ、その内容はさまざまです。
主な現れ方は次のとおりです。
- ・寝つけない
- ・夜中に何度も目が覚める(最も多い)
- ・朝早く目が覚めて眠れない
- ・昼間に強い眠気がある
睡眠の障害はパーキンソン病に非常に多く、5割から8割の方が何らかの悩みを持っているとされています。病気が診断される前や、初期からみられることも多いとされています。眠れないのはご本人のせいではなく、病気が関わっていると捉えることが大切です。
睡眠の問題が起こる背景
パーキンソン病の睡眠障害の原因は、多岐にわたります。
- 基本的な環境:
ベッドが合わない、室温の調整、周囲の音、光が入るなど - 脳の変化:
ドパミンを含む脳の神経伝達物質の低下 - 夜間の症状:
ふるえ、筋肉のこわばり、痛み、頻尿、寝返りのしにくさ、動けなくなる不安 - 薬の影響:
夜間はレボドパの効果が弱まって症状が強くなる、目が冴えてしまう薬がある、逆に日中は眠気を起こす薬もある
睡眠の問題にはどんなタイプがあるか
睡眠障害にはいくつかのタイプがあります。自分がどのタイプに当てはまるかを考えてみましょう。
- 入眠困難(寝つけない):
布団に入っても頭が冴えて、いろいろと考えて眠れません。背景に不安やうつ、薬が効かなくなるオフ症状があることもあります。 - 中途覚醒・早朝覚醒(最も多い):
途中で目が覚めたり、朝早くに目が覚めたりします。夜中に2回以上目が覚める方もいて、もう一度寝ようとしても寝つけないことが多くあります。原因は、夜間の頻尿、寝返りが難しく体が痛くなること、夢や寝言、早朝のオフ症状などです。 - 夜間頻尿:
目が覚めてトイレに行く場合も、行きたくなって目が覚める場合もあります。頻繁なトイレは転倒のリスクにつながります。過活動膀胱や前立腺肥大が関わることもあり、睡眠の障害なのか排尿の障害なのかを見分けることも大切です。 - レム睡眠行動障害:
夢の内容をそのまま行動に移してしまう異常で、大きな寝言や、叩く・蹴るといった行為がみられます。激しい場合はベッドから転落する危険もあります。パーキンソン病そのものの脳の変化によるもので、頻度が高い障害です。本人が気づいていない場合もあり、まずは怪我の予防が最優先になります。 - レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群):
夜になると足がむずむず・じんじんして動かしたくなり、じっとしていられません。夕方から夜にかけて強くなります。足をさすったり歩き回ったりすると良くなりますが、横になるとすぐに症状が出ます。眠れない原因が足にあることもあります。 - 昼間の眠気:
昼間に眠い方が多く、何もせずテレビを見ていると寝てしまうことがあります。運転中に眠くなったり、突然眠ってしまう「突発的睡眠」が起こることもあります。脳の変化に加え、薬の影響もあり、ドパミンアゴニストの内服中に多いとされています。
睡眠の問題への対応:生活の工夫

睡眠障害の対応では、まず生活の工夫が大切です。
午前中に光を浴びる
午前中に散歩をしたり、ベランダや窓際で過ごしたりして、光を浴びましょう。曇りの日でも効果があるため、まずは外に出ることが望ましいです。
日光には、体内時計をリセットする役割があります。朝に光を浴びると、夜に自然に眠くなり、深い睡眠が得られます。睡眠は1日全体で考えるもので、朝から日中の過ごし方が睡眠に影響します。
日中の過ごし方と昼寝
- ・午前中に体を動かします(散歩や体操)
- ・昼寝をする場合は30分以内にし、15時以降は避けます
- ・長時間の昼寝は避けます
- ・布団に入っても眠れないときは、一度起きて、眠くなってから戻ります
- ・昼間に活動的に過ごすことが、夜によく眠れるコツです
寝る前の過ごし方
寝る1時間ほど前から、次のように過ごします。
- ・照明を少し暗くします
- ・スマホやテレビは控えめにします
- ・軽いストレッチや深呼吸を行います
- ・カフェインの入った刺激物を避けます
夜間の安全と転倒予防の工夫

夜にトイレへ行く方が多いため、夜の環境を安全で快適にすることが大切です。転倒予防のための環境調整は、睡眠の質の改善にもつながります。
- ・トイレまでの足元を十分に明るくします(暗いと段差でつまずき、転倒の原因になります)
- ・寝室からトイレまでの動線を短くします
- ・すくみ足がある方は、床に目印のテープを貼る、トイレの中に足跡のマークをつけるなどで、すくみを防ぎます
- ・ベッドの高さや寝具を調整し、必要な場所に手すりや介護用品を備えます
薬による対応
睡眠障害のタイプや原因に合わせて、薬の調整も行います。薬の種類や服用の注意については、パーキンソン病の薬の記事もあわせてご覧ください。
ドパミン系の薬の調整
- ・夜間に薬が切れて辛い場合は、レボドパを寝る前に飲むことや、特別な場合には夜間に内服することがあります
- ・朝、起きてすぐに内服すると、動きが早く良くなります
- ・ドパミンアゴニスト、MAO-B阻害薬、COMT阻害薬は、夜間の症状を良くするとされています
- ・一方で、ドパミンアゴニストは日中の眠気を強くすることがあります。眠気が出るかどうかは個人差が大きく、必ずしも悪いわけではありません
- ・夜間の痛みには、逆にドパミンアゴニストやMAO-B阻害薬で和らぐというデータもあります
タイプ別の治療
- むずむず脚症候群:
血液検査で鉄が不足している場合は、鉄を補います。それ以外では、ドパミンアゴニストの増量や、この症候群に特有の薬(ガバペンチン エナカルビル)で効果が期待できます。 - レム睡眠行動障害:
怪我が心配な場合、クロナゼパムが有効とされています。 - 夜間頻尿:
寝る前の水分やコーヒー・お茶を控えます。過活動膀胱がある場合は、泌尿器科的な治療薬で改善することもあります。
睡眠導入剤について
必要な場合は睡眠導入剤を使ってもかまいませんが、なるべくベンゾジアゼピン系は避けることが望ましいとされています。ベンゾジアゼピン系は、夜間の転倒リスクが上がるというデータがあるためです。
主治医に相談したほうがよいサイン
次のような睡眠の悩みがある場合は、主治医によく相談しましょう。
- ・寝つけない(入眠困難)
- ・夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
- ・夜間の頻尿
- ・レム睡眠行動障害で怪我が心配
- ・足がむずむずして眠れない
- ・日中、眠くてしかたがない
- ・介護する方が、夜に起こされて困っている
睡眠障害は、タイプや原因に合わせた対応が必要です。種類に応じた治療を適切に受けることが大切です。
パーキンソン病の睡眠障害は主治医と相談しながら整えていく
パーキンソン病では、多くの方が睡眠の悩みを抱えています。眠れないのは病気が関わっているためで、ご本人のせいではありません。
入眠困難、中途覚醒、夜間頻尿、レム睡眠行動障害、むずむず脚症候群、昼間の眠気など、睡眠の問題にはさまざまなタイプがあります。まずは生活の工夫(午前中に光を浴びる、日中は活動的に過ごす、寝る前の環境を整える)や転倒予防の工夫を行い、必要に応じてタイプや原因に合わせた薬の対応を検討します。
睡眠の悩みは、タイプによって対応が異なります。困ったときは主治医に相談しながら、自分に合った方法で整えていくことが大切です。
Youtube|坪井義夫の「パーキンソン病ノート」の紹介
医師紹介
坪井 義夫 先生
医療法人徳隣会・つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
順天堂大学大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座 特任教授
2024年3月まで坪井先生が勤務されていた福岡大学で運営されていたWEB動画メディア「web park ひろば」は、同年4月に「パーキンソン病ノート」として株式会社サンウェルズへ引き継がれました。
パーキンソン病で悩む多くの方の支えになりたいという坪井先生の思いとともに、現在も継続して配信が行われています。
つつみクリニック パーキンソン病専門外来センター
https://tsutsumiclinic.net/parkinson/
坪井義夫の「パーキンソン病ノート」Youtube再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLiYcrCA0RHCTWgIITjvPjWv9vFCXFds61
本日ご紹介した動画(2本)
パーキンソン病の睡眠について|坪井義夫のパーキンソン病ノート
「睡眠について」の動画をYoutubeで見る
パーキンソン病の睡眠障害への対応|坪井義夫のパーキンソン病ノート
「睡眠障害への対応」の動画をYoutubeで見る
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この記事を監修した人
坪井 義夫 先生
医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
順天堂大学大学院医学研究科 特任教授
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