パーキンソン病の治療とは?薬物療法・リハビリ・手術療法を解説
パーキンソン病と診断されると、「これからどんな治療を受けるのか」「日常生活に支障が出るのか」といった不安を感じる患者さまやご家族は少なくないでしょう。パーキンソン病の治療は、生活の質(QOL)の維持を目標に、複数の方法を組み合わせながら進めるのが一般的です。
この記事では、治療の2本柱である薬物療法とリハビリテーションに加え、デバイス補助療法や手術療法といった追加の選択肢についても解説します。
目次
パーキンソン病治療の全体像
パーキンソン病の治療の目的は、できるだけ長く自分らしい生活を送ることにあります。
パーキンソン病は進行性の疾患であり、現在のところ完治する方法や、進行そのものを止める方法は見つかっていません。そのため、治療においては症状の進行をできるだけ遅らせ、コントロールしながら日常生活の質を保つことを重要視します。
パーキンソン病治療の柱は、症状を緩和する薬物療法と、生活動作の維持を目指すリハビリテーションの2つです。個人の状況や症状の進行によって、機器を用いるデバイス補助療法や手術療法が加わる場合もあります。どの治療を組み合わせるかは、主治医と相談しながら進めていくことが大切です。
薬物療法
パーキンソン病の治療では、早期から薬物療法を始め、症状や副作用に合わせて種類や量、飲むタイミングを調整することで症状をコントロールします。服薬の回数や組み合わせは個人によって異なるため、主治医が症状に合った調整を行えるよう、ご自身の状態を正確に伝えることが大切です。
また、症状の進行に応じて服薬内容は変わっていくため、一度調整したら終わりではなく、定期的な見直しを重ねることで、その時々に適した治療を続けることができます。
ここでは主な薬の種類と、薬物治療を長く続ける中で起こりやすい変化について見ていきましょう。
主な薬の種類
パーキンソン病を発症した方の脳内では、ドパミンという物質が不足していることがわかっています。そこで薬物療法では、脳内で不足しているドパミンの働きを補う薬を中心に使用します。
ドパミンの働きを補う薬としては、レボドパ(L-ドパ製剤)が代表的です。さらに症状や個人の状況に応じて、ドパミンの代わりに働く薬や、ドパミンの効果を長持ちさせる薬などを組み合わせることもあります。
薬の種類や量が増えるのは、治療がうまくいっていないわけではなく、症状や副作用に合わせて調整した結果であることがほとんどです。自己判断で減らしたり止めたりせず、変化があれば主治医に相談してください。
パーキンソン病治療に使われる主な薬と働き
| 主な働き | カテゴリ | 主な薬剤名 |
| ドパミンの働きを補う | L-ドパ製剤 | レボドパ、レボドパ・カルビドパ、レボドパ・ベンセラジド |
| ドパミンの代わりに働く | ドパミンアゴニスト製剤 | カバサール、ビ・シフロール、ミラペックス、ペルマックス、レキップ、ニュープロパッチ、ハルロピテープ |
| ドパミンの効果を長持ちさせる | MAO-B阻害薬 | エフピー、アジレクト、エクフィナ |
| COMT阻害薬 | コムタン、オンジェンティス | |
| その他 | ドパミン放出促進薬 | シンメトレル |
| 抗コリン薬 | アーテン、アキネトン | |
| ノルアドレナリン系作用薬 | ドプス | |
| レボドパ作用増強薬 | トレリーフ | |
| アデノシンA2A受容体拮抗薬 | ノウリアスト |
薬の作用や使い方については、こちらの記事をご覧ください。
パーキンソン病の薬とどう向き合う?種類や服用の注意点などを解説
長期の薬物療法で起こること
薬物療法を長期間続けると、薬の効き目に波が出ることがあります。代表的なものが、効いている時間(オン)と効いていない時間(オフ)がはっきり現れる「ウェアリング・オフ現象」と、自分の意思とは関係なく体が動く「ジスキネジア」です。
これらは、病気の進行に伴って脳内でドパミンを蓄える力が弱まることが主な原因です。服用したレボドパなどは体内から排出されていくものですが、脳内にドパミンが蓄えられていれば不足することはありません。しかし、脳内にドパミンが蓄えられていない状態では、薬が排出されていく際にドパミンが不足しやすくなるのです。
薬が効かなくなったというわけではないため、服薬の回数や組み合わせ、飲むタイミングの調整によって対応します。
薬の調整をしても日常生活に支障が残る場合は、ほかの治療法を検討する必要があるかもしれません。不安を感じたら、症状の出る時間帯を記録して主治医に伝えましょう。
ウェアリング・オフ現象については、こちらの記事をご覧ください。
ウェアリング·オフ現象はどんなもの?症状と原因、対処法を解説
リハビリテーション
パーキンソン病のリハビリは、筋力や柔軟性を保ち、運動症状(運動緩慢・無動、振戦、筋強剛、姿勢保持障害)を軽減することを主な目的として行います。転倒リスクを下げ、日常生活動作をできるだけ自分で続けられるようにするためには欠かせません。
専門職のサポートのもと、理学療法、作業療法、言語聴覚療法の3つを組み合わせて実施します。理学療法では歩行やバランス、作業療法では着替えや食事などの日常動作、言語聴覚療法では発声や飲み込みを支えます。どれか1つだけに偏らず、身体全体の機能を見て進めることが大切です。
薬物療法で身体を動かしやすくなった時間帯であれば、効率的にリハビリを行えます。薬とリハビリは両輪であり、どちらか一方だけでは十分ではありません。通院や通所での訓練に加え、無理のない範囲で家庭でも身体を動かすと、リハビリの効果を保ちやすくなります。

パーキンソン病のリハビリについては、こちらの記事をご覧ください。
パーキンソン病のリハビリとは?種類や効果、家庭でできる方法を解説
デバイス補助療法
デバイス補助療法は、薬物療法で十分な調整を行ってもウェアリング・オフ現象やジスキネジアが強く、日常生活に支障が残る場合に検討される治療です。デバイスを身体に埋め込んだり留置したりする必要があり、向き不向きがあるため、すべての患者さまが対象になる治療法とはいえません。主治医とよく相談して検討してください。
脳深部刺激療法(DBS)

脳深部刺激療法(DBS)とは、脳の深部に電極を、胸に刺激電源(パルスジェネレーター)を埋め込み、電気刺激によって神経の異常な活動を抑え、運動症状をコントロールする治療法です。ウェアリング・オフ現象やジスキネジアが強い方、薬で改善しにくい振戦(ふるえ)などに検討されます。
電極のターゲットとして視床下核、淡蒼球内節があります。薬物量の減量が可能なのは、視床下核をターゲットにしたDBSです。淡蒼球内節をターゲットにした場合は、ジスキネジアやジストニアに有効とされています。
脳深部刺激療法(DBS)の特徴は、刺激の強さや範囲をあとから調整できる点です。薬の減量が期待できる場合もありますが、薬が完全に不要になるわけではありません。手術後は刺激の調整が可能で、電池の交換も定期的に行います。最近では充電式が利用できるようになり、電池交換も長期にわたって不要になっています。
L-ドパ維持経腸療法(LCIG)

L-ドパ維持経腸療法(LCIG)とは、胃ろう(胃から身体の外に小さな開口部を作ること)を造設し、専用ポンプとチューブで薬剤(レボドパ・カルビドパ配合ゲル剤)を小腸に直接、持続的に投与する治療法です。内服に比べて血中濃度が安定しやすく、オフ時間の短縮やジスキネジアの軽減が期待されます。
一方で、胃ろうの造設手術が必要です。ポンプの携帯や毎日のカセット交換、胃ろうの毎日のケアなど、日常生活への負担もあります。導入後の生活のイメージも含めて、慎重に検討しましょう。
ホスレボドパ・ホスカルビドパ持続皮下注療法

ホスレボドパ・ホスカルビドパ持続皮下注療法とは、腹部の皮下にカニューレ(細くてやわらかい医療用の管)を留置し、小型ポンプで24時間持続的に薬剤を投与する治療法です。夜間や早朝の症状改善にも有効とされます。
手術は不要ですが、カニューレや薬剤の交換は必要です。まれに、注射部位の感染や皮膚トラブルが起こることがあります。
MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)

MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)とは、頭皮の外から超音波を一点に集め、脳内の治療部位を熱で凝固する治療法です。特に、振戦(ふるえ)などの運動症状を薬でコントロールすることが難しい場合に検討されます。
従来、定位的高周波凝固術という脳内に針を挿入する手術も行われてきましたが、MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)は頭に穴を開けずに手術可能です。開頭手術や全身麻酔が不要で、体への負担が小さいことが特長といえます。ただし、すべての患者さまに向くわけではありませんので、効果やリスクについて主治医の説明を受け、納得した上で検討しましょう。
細胞移植治療(iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞移植)
細胞移植治療とは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製されたドパミン神経前駆細胞(商品名:アムシェプリ)を脳内に移植し、失われたドパミン神経を補う治療法です。2026年3月に条件・期限付き承認を取得し、同年5月より保険適用が開始されました。
レボドパを十分投与してもウェアリング・オフ現象が認められる患者さまが対象で、実施できる施設は限られます。また、完治療法ではないということは十分に理解しておきましょう。
新しい治療であっても、すべての患者さまがすぐに受けられるわけではありません。関心がある場合は、現在の治療を自己判断でやめずに継続した上で、主治医に相談することが大切です。
パーキンソン病の最新の治療については、こちらの記事をご覧ください。
パーキンソン病が治る時代は来る?アムシェプリなど最新研究を解説
パーキンソン病の治療は、主治医と相談して進めよう
パーキンソン病は進行性の疾患で、時間とともに症状が変化します。治療は薬物療法とリハビリテーションを原則として進められますが、どの方法が適しているかは、主治医に日常の様子を正しく伝えて相談しながら決めていきます。
自分だけでコントロールするのが難しい場合は、ご家族や周囲に症状を理解してもらい、サポート体制や生活環境を整えることも重要です。患者さまとご家族だけで抱え込まず、専門施設を頼るという選択肢もあります。
PDハウスにはパーキンソン病専門スタッフが在籍しており、医師・薬剤師と連携しながら、治療と向き合う患者さまやご家族の暮らしについてアドバイスいたします。資料請求やご見学は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
参考:
パーキンソン病診療ガイドライン2018(日本神経学会)
パーキンソン病(指定難病6)(難病情報センター)
パーキンソン病のデバイス補助治療|DBSについて|坪井義夫のパーキンソン病ノート(PDハウスオンライン)
パーキンソン病のデバイス補助治療「経腸療法」について|坪井義夫のパーキンソン病ノート(PDハウスオンライン)
パーキンソン病の持続皮下注療法|坪井義夫のパーキンソン病ノート(PDハウスオンライン)
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この記事を監修した人
服部 信孝 先生
順天堂大学 学長補佐
順天堂大学医学部 神経学講座 特任教授
理化学研究所 脳神経科学研究センター 神経変性疾患連携研究チーム チームディレクター
順天堂大学 ニューロン-グリア クロストークセンター センター長
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