パーキンソン病の気分障害とは?うつ・不安・意欲の低下(アパシー)の特徴と対応を解説|坪井義夫医師の「パーキンソン病ノート」
パーキンソン病の気分障害は、多くの方にみられる非運動症状のひとつです。無気力(意欲の低下)、不安、うつといった心の変化は、気合いや性格の問題ではなく、病気が関わって起こります。
本記事では、坪井義夫先生のYouTube「パーキンソン病ノート」の内容をもとに、パーキンソン病の気分障害の特徴と原因、そして生活の工夫や薬による対応を解説します。
※本記事で紹介する動画は以下からご覧いただけます。
【動画】「パーキンソン病の気分障害について」
目次
パーキンソン病でみられる気分の変化とは
パーキンソン病の気分障害とは、無気力(アパシー)、不安、うつをまとめた心の問題です。これらはパーキンソン病によく伴うもので、病気そのものの症状でもあります。パーキンソン病に伴う非運動症状のひとつであり、幻覚や妄想などの精神症状とは異なります。
気分障害の背景には、脳の中のドパミンなどの物質の変化や、使っている薬の影響、睡眠障害などの他の非運動症状、周りの環境の問題など、さまざまな要因があります。
気分の落ち込みや不安があると、それを自分のせいだと感じてしまう方は少なくありません。しかし、これは患者さんご本人のせいではなく、脳内のドパミン不足によることが多いとされています。気になる変化に気づいたら、まずは相談することが大切です。
気づきたいサイン
次のような変化がみられたら、パーキンソン病の症状かもしれないと考えてみましょう。
- ・表情が暗くなった
- ・人と会いたくなくなった
- ・好きだった趣味から離れてしまった
- ・じっとしている時間が長くなった
- ・家族との会話が減った
- ・気分が晴れず、何をするのもおっくうになった
- ・先のことが不安で眠れない
- ・外出が億劫になった
これらは、患者さんご本人だけでなく、ご家族の気づきも大切です。
気分障害を表す言葉
気分障害は、いくつかの言葉で表されます。それぞれ意味が異なります。
- うつ:気分が落ち込む
- 不安:わけもなく心配になる
- アンヘドニア:喜びや楽しみを感じにくくなる
- アパシー(無気力):やる気が出ない、興味や関心がなくなる
これらの症状は互いに重なり合っており、どれが強く出るかは人によって異なります。なかでも、気分が落ち込む「うつ」と、やる気が出ない「アパシー」は、似ているようで原因も対応も異なります。以下では、この2つを分けて説明します。
無気力(アパシー)の特徴と原因
アパシー(無気力)は、パーキンソン病で最も多いとされる気分障害です。
特徴
アパシーは、思考・行動・感情のそれぞれに現れます。
- 思考:「別に困っていない」「やらなくてもいい」「何もしたいと思わない」という状態です。悲しいわけでも、落ち込んでいるわけでもないのが特徴です。
- 行動:自分から何もしない、声をかけられないと動かない、外出や趣味をやめる、といった変化がみられます。
- 感情:喜びや驚きが少なく、表情が乏しくなります。
うつと違い、ご本人は「困っていない」と感じていることが多く、悲しくて落ち込んでいるわけではない点が、アパシーの特徴です。
原因
アパシーには、やる気を生み出す回路である前頭葉−線条体系の障害が関わり、ドパミン欠乏の影響が強いとされています。ドパミン不足が原因のことが多いため、治療できる症状と考えられます。
また、病気の進行とも関連します。罹病期間が長くなると増えやすく、高齢では認知機能の低下と併存しやすいことにも注意が必要です。
うつの特徴と原因
うつは、アパシーと重なる部分も多いものの、ご本人がつらさを感じやすい点で異なります。
特徴
うつは、3つの側面から現れます。
- 気分の症状:気分が沈む・憂うつになる、不安が強い、先のことを悲観的に考える、好きなことが楽しくない
- 体の症状:疲れやすい、眠れない・眠りすぎる、食欲が低下する
- 思考の変化:自分は役に立たない人間だと責める、迷惑をかけていると感じる、自信がなくなる
アパシーと違い、うつはご本人が「つらい」と感じていることが多くあります。
原因
うつには、アパシーよりも複雑な背景があります。
- 脳の変化:ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンといった物質の減少
- 病気に伴う心理的要因:将来への不安、社会的役割の変化、社会的な孤立
- 睡眠障害・疲労:不眠、夜間症状、疲労
- もともとの傾向:もとからうつの傾向がある方もいます
もともとうつの傾向がある方が、パーキンソン病に伴う脳の変化によって、より症状が表に出てくると見ることもできます。
気分障害への対応・相談のポイント

気分障害は病気の症状です。まず、ご本人が自分を責めないことが大切です。そのうえで、次のような生活の工夫が役立ちます。
- ・生活リズムを整え、午前中に日光を浴びる
- ・睡眠をしっかり確保する
- ・リハビリや運動の習慣を持つ
- ・人とのつながりが途切れないように保つ
薬による対応
薬による対応では、何よりもドパミン治療の最適化が基本です。ドパミン治療には、ご本人にとって適した量があります。過剰にも不足にもならないよう、しっかりとコントロールしていきます。薬の種類や服用の注意については、パーキンソン病の薬の記事もご覧ください。
- ・レボドパ以外のドパミンアゴニストやMAO-B阻害薬には、気分障害を改善する効果がみられるとされ、併用が有効なことがあります
- ・強いうつがある場合は、精神科や心療内科と連携し、パーキンソン病を悪くしない形で治療を進めます
家族・周囲のかかわり方
ご家族の対応も、気分障害の支えになります。
- ・「気のせい」とはとらえず、放っておかない
- ・共感的に接する
- ・無理に励まさない
無理な励ましは、かえってご本人の負担になることがあるとされています。病気の症状であることを理解し、寄り添う姿勢が大切です。
パーキンソン病の気分の変化は早めに相談することが大切
無気力、うつ、不安は、パーキンソン病に伴う症状です。「気合いが足りない」「前向きに考えれば治る」「年のせい」といったものとは違います。ご本人が怠けているわけでも、やる気がないわけでもなく、病気によるものです。
気分がつらいときも、やる気が出ないときも、患者さんご本人のせいではありません。気分障害で辛い思いをしている方やご家族は、かかりつけ医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。
Youtube|坪井義夫の「パーキンソン病ノート」の紹介
医師紹介
坪井 義夫 先生
医療法人徳隣会・つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
順天堂大学大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座 特任教授
2024年3月まで坪井先生が勤務されていた福岡大学で運営されていたWEB動画メディア「web park ひろば」は、同年4月に「パーキンソン病ノート」として株式会社サンウェルズへ引き継がれました。
パーキンソン病で悩む多くの方の支えになりたいという坪井先生の思いとともに、現在も継続して配信が行われています。
つつみクリニック パーキンソン病専門外来センター
https://tsutsumiclinic.net/parkinson/
坪井義夫の「パーキンソン病ノート」Youtube再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLiYcrCA0RHCTWgIITjvPjWv9vFCXFds61
本日ご紹介した動画
パーキンソン病の気分障害|坪井義夫のパーキンソン病ノート
「気分障害について」の動画をYoutubeで見る
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この記事を監修した人
坪井 義夫 先生
医療法人徳隣会 つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長
順天堂大学大学院医学研究科 特任教授
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