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2024-10-30PDハウス足立

4つに分かれた甘い視線

 

 小皿にそっと置かれたひとつの人形焼き。しかも、すでに四つに切り分けられている。誰かの手で丁寧に切られたその断片たちは、まるで静かに語りかけるように、控えめな視線でこちらを見つめているようだった。

 最初のひとかけらを手に取り、恐る恐る口に運ぶと、ほのかな甘さと香ばしさがふわりと広がる。しかしその瞬間、残りの三つの断片がじっとこちらを見ている気がして、心が少しざわつく。続けて二つ目、三つ目と食べ進めるたび、どんどん人形焼きの輪郭が消えていくのがどこか切なく思えてくる。

 そして最後の一片を前に、ほんの少しためらう。四つに分かれたひとかけらたちが、最後のひと口で再び一つの存在に戻るのかもしれない――そう思いながら口に含むと、甘さの向こうにほんの少しだけ、切なさの余韻が残った気がした。

 

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